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2024.01.27 08:00

【政府の能登支援】展望示して不安解消を

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 政府は能登半島地震の被災地支援のための政策パッケージを決め、裏付けとなる財源として1553億円の予備費支出も閣議決定した。
 岸田文雄首相は「国としてできることは何でもする」と強調。首相をトップとする「能登復興本部」も設置する方針だ。
 さまざまな困難に直面している被災者にとって、最も大きな不安は先行きが見えないことだろう。展望や目標が明確になれば、不安の解消や再起に向けた意欲につながる。政府の支援策がそのような存在にならなくてはいけない。
 24日にあった衆参予算委員会の集中審議では、野党から自衛隊展開などで初動の鈍さを批判された。自民党の裏金事件が、政権の地震対応に影響しているとの指摘もあった。首相は反論したが、そのような疑念が生じること自体が被災者のストレスになる。支援策を実行するスピード感が問われる。
 支援策は、生活の再建、なりわいの再建、災害復旧の3本柱からなる。多くの被災者の関心事は、住み慣れた土地で、地震前に近い生活をいつ送れるようになるかだろう。
 だが、前提となる水道の復旧が遅れている。被害が大きい6市町の復旧は早くても2月末、遅い場所は4月以降となるという。し尿処理施設の稼働停止も課題になっている。広域的な協力態勢の整備が急務だ。
 生活再建では、半壊以上の家屋解体は自己負担なしで促進し、地域型の木造住宅の活用を含めた仮設住宅の整備を進める。重要なのは、早期完成の見通しを立て、示すことだろう。それが避難生活を送る被災者の気持ちを支え、想定より進んでいない2次避難の促進にもつながる。
 全国的に建設・建築関連業の人手が不足する中、労働力の確保が課題になる。予算措置だけでなく、事業の執行体制や進捗(しんちょく)状況にまで目配りが要る。
 支援が十分かも見極めていかなくてはならない。住宅が被災した世帯を対象に最大300万円を支給するとした生活再建支援金を巡り、野党側が600万円に倍増する法改正案を提出した。物価高、資材高騰などが進んでいる。検討するべきだ。
 中長期的には、高齢化が進む能登地域は被災による人口流出の加速、衰退が懸念される。地場産業が果たす役割が重みを増す。なりわい再建の支援策では、事業者向けに最大15億円の施設復旧補助金や、伝統産業の継続のための補助金を設けた。金銭面だけでなく、経営の伴走的な支援も必要ではないか。
 被災地のニーズは時間の経過とともに変わる。機動的、追加的な対応を心掛けるべきだ。時機を逸しないよう、国会では与野党の協力姿勢も求められる。
 被災地では、なお1万人以上が避難所で不自由な暮らしを迫られており、応急的な支援策も当然軽視できない。避難生活が長引くと精神的な負担も積み重なる。「見守っている」「取り残さない」とのメッセージも発信し続けていくべきだ。

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