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2024.01.23 08:00

【損保ジャパン】利益優先で不正を助長

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 契約欲しさに一般契約者を欺いていた。保険契約者の保護という社会的使命を見失っていたのだから、グループの経営理念に掲げる「お客さま視点」が「うわべだけ」と断じられても仕方がないだろう。
 中古車販売大手ビッグモーター(BM)の保険金不正請求問題を巡り、SOMPOホールディングスが外部弁護士による調査の最終報告書を公表した。傘下の損害保険ジャパンが不正を認識しながらBMとの取引を続け、コンプライアンス(法令順守)体制は機能不全に陥っていたと結論付けた。金融庁は今月下旬にもSOMPO、損保ジャパンの両社に業務改善命令を出す。
 故意に顧客の車を傷つけるという前代未聞の悪質な手口で注目されたBMの保険金水増し請求は、損保ジャパンとの「癒着」が助長したといってよい。
 背景には、大手損保各社が契約者の車両修理を紹介する見返りに、大口の保険代理店でもあったBMから、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の契約を割り振られていた状況がある。
 ただ、BMとの関係が特に親密だった損保ジャパンは許されない一線を越えてしまう。不正を疑った損保各社が取引を停止する中、不正を「黙認」する形で唯一、修理のあっせんを再開させた。
 損保ジャパンはなぜ、一般契約者の不利益につながりかねない、不可解な経営判断に至ったのか。調査報告書の指摘は手厳しい。
 社内の任務や権限、責任の所在が曖昧で、関係部署が主体性を失っていたという。その上、売り上げや業界内のシェアを重視する営業偏重の企業風土もあった。
 営業部門の立場が優位な一方、肝心の保険金支払い部門は発言力に乏しく、BM工場の質が低いことを認識しながら、営業部門の要請でBMへのあっせんを優先させた。ゆがんだ体質がコンプライアンスの意識をまひさせた格好だ。
 そうした企業風土を見過ごしてきた親会社の監督責任も極めて重い。保険業法は顧客保護のため、持ち株会社に子会社を監督する体制整備を求めているが、BM問題ではその役割を果たせなかった。
 SOMPOは2022年6月、損保ジャパンの社外取締役を撤廃。親会社による統制で問題ないと判断したという。しかし、実際は損保ジャパンとの意思疎通は不十分で、表面的な報告でリスクを過小評価し、傷口を広げた。ガバナンス(企業統治)の面でも過信があったのは明らかだ。
 損保ジャパンの抱える問題はBMとの関係にとどまらない。大きなリスクを抱える企業の契約を損保数社で分担して引き受ける「共同保険」でもカルテル疑惑が浮上。金融庁のほか、公正取引委員会も独禁法違反(不当な取引制限)に当たる可能性があるとみて調査を進めている。
 一連の問題でグループの信頼は地に落ちた。目に見える形で体質改善を図る必要がある。

高知のニュース 社説

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