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2024.01.22 08:00

【ヤングケアラー】法制化で支援を着実に

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 政府は、日常的に家事や家族の世話に追われるヤングケアラーの支援を法制化する方針だ。26日召集の通常国会に、子ども・若者育成支援推進法改正案を提出する。
 国や自治体の支援対象と位置付けることで、地域格差の解消が期待される。実態やニーズの把握を進めながら、子どもたちの負担軽減へと着実につなげたい。
 改正案ではヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義する。この一人一人が子どもの「手伝い」の範囲を超える負担で、勉学やスポーツなどに打ち込む機会を失っているといっていい。
 ヤングケアラーの支援は現状、法律上の明確な根拠規定がなく、自治体ごとの温度差も指摘される。地域によっては支援が行き届いていなかったり、支援内容がニーズに合わなかったりするケースも見受けられる。支援団体などから法整備を求める声が上がっていた。
 家事や家族の世話は大人になっても続くため、18歳未満を所管する児童福祉法ではなく、同法で規定することにした。年齢で支援が途切れる事態は避けなければならない。妥当な判断ではないか。
 課題は当事者の年齢層も広く、実態が見えにくいことだろう。2021、22年に行われた国の調査では、小学6年生の約15人に1人、中学生は約17人に1人、高校生では約24人に1人のヤングケアラーがいた。
 置かれた環境もさまざまだ。幼いきょうだいの世話から、親や祖父母の介護まで多岐にわたり、その要因も病気や障害、金銭事情などデリケートな問題が絡む。それぞれ負担や悩みも違うだけに、支援へのニーズも幅広くなろう。
 国や自治体はこれまでにも、支援機関との仲介役となるコーディネーター設置や、当事者同士が悩みを相談し合える場所の提供といった施策を進めてきた。これらはいわば、支援の入り口といえる。そうした接点をどう、具体的な負担軽減につなげるかが重要となる。
 法制化で多くの事例とニーズを共有化することで、支援が底上げされることはもちろん、より効果的な仕組みづくりが求められる。
 国や自治体の支援とともに、地域や社会も変わる必要があろう。当事者はSOSの声を上げづらかったり、厳しい環境を「仕方がない」と受けとめたりする傾向がある。これまで「家庭内の問題」としてきた社会の風潮が、それを助長してきたのではないか。
 ヤングケアラーは何も特別な存在ではない。祖父母や両親らの事故、病気がきっかけでどの子どもも置かれ得る状況だ。決して、人ごとではない。
 近年、ヤングケアラーへの関心は高まってきたものの、まだ認知は十分ではあるまい。周囲の大人が早期に気付き、対応することが必要だ。公的支援とともに、社会の在り方が問われている問題といえる。

高知のニュース 社説

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