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2024.01.21 08:00

【共産委員長交代】低迷要因と向き合え

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 共産党の「顔」が23年ぶりに交代した。2000年から委員長を務めてきた志位和夫氏が退任し、後任に田村智子政策委員長が就いた。
 女性党首は1922年の結党以来初めてだ。重要政策の一つに掲げてきた「ジェンダー平等」を実践した。党の理論的支柱だった不破哲三前議長が指導部から退くなど、世代交代も進めた。議員数や党員数など党勢が退潮する中、刷新感を出しててこ入れした格好だ。
 ただ、執行部のイメージを変えたとしても、党勢低迷の本質的な理由を見極め、踏み込まなければ流れを変えるのは難しいのではないか。一方では、党がこだわってきた理論や組織原則がある。志位氏は「議長」として残り、書記局長ポストも続投となった。田村氏が独自色をどう発揮するか、手腕が問われる。
 共産党が果たしてきた野党的役割は小さくない。古くはロッキード事件など自民党の疑惑を追及。近年では、田村氏が頭角を現す案件にもなった、安倍晋三元首相の「桜を見る会」問題の告発があり、いま政権を揺るがしている自民派閥の裏金事件も、党機関紙「しんぶん赤旗」の報道が端緒だった。
 地方レベルでも、大政翼賛的な議会体制に対峙(たいじ)する役割を自任し、チェック機能の一端を担っている。活動は「平和」と「暮らし」を重視し、政党交付金に頼らず党運営するなど、有権者が共感する部分があるのは確かだ。
 しかし、党勢は厳しい。1990年に約50万人いた党員は約25万人に半減し、高齢化も顕著だ。「しんぶん赤旗」の読者数は2000年の約200万人が約85万人に減った。
 国政でも影響力を高めていく展望を見いだせない。安全保障法制への反対運動をきっかけに15年ごろから進めた野党共闘は、一定の成果は出したものの、21年衆院選で「野合」などの批判を浴びて敗れた立憲民主党などは対応を見直し、機運はしぼんでいる。地方選挙でも議席を減らすなど苦戦が続く。
 若い党員、支持者の確保に苦戦し、他の野党が共闘を敬遠する理由は何か。志位委員長時代、共産は天皇制や自衛隊を当面容認する方針に転じるなど現実路線もとってきたが、それでもなお、乖離(かいり)があるということではないか。
 革命政党として出発した歴史などに起因する、「共産アレルギー」と呼ばれるような感覚的、感情的な部分もあるだろう。こうしたものに正面から向き合う必要がある。
 志位体制が歴代最長の20年以上に及んだ中、昨年は「党首公選」を求めた党員が除名され、「異論を許さない党」とも指摘された。党側は反論するが、トップダウンの組織運営であるのは間違いない。開かれた党への取り組みも求められる。
 国政では「自民1強」のおごりやゆがみが現れ、しわ寄せが国民に及んでいる。緊張感のある政治には、存在感のある野党が欠かせない。共産の新執行部にはその責任を果たしてもらいたい。

高知のニュース 社説

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