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2024.01.20 08:00

【自民の裏金事件】不信払拭へ道のりは遠い

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 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、東京地検特捜部は政治資金規正法違反の罪で、安倍派(清和政策研究会)など3派閥の現・元会計責任者を立件した。いずれも派閥の政治資金収支報告書の作成を担った。
 派閥幹部らの責任は問われないまま、捜査は一つの節目を迎えた。だが、トカゲの尻尾切りのような状況のままでは、有権者の不信は拭えない。自民党は説明責任と正面から向き合い、政治家の責任や再発防止策を明確に示す必要がある。
 安倍派と二階派(志帥会)では、パーティー券の販売ノルマ超過分を収支報告書の収入に記載せず、議員側に還流していた。安倍派は支出にも記載しておらず、受領した議員側も収入として書いていなかった。
 特捜部は、裏金の総額が6億円規模に上る可能性がある安倍派の会計責任者と、億単位の不記載があった二階派の元会計責任者を在宅起訴とした。昨年12月まで岸田文雄首相が会長を務めた岸田派(宏池会)は2018~20年の収支報告書に計約3千万円の不記載があり、元会計責任者が略式起訴された。
 受領した議員側でも、5千万円を超える還流を受け、裏金としたとされる大野泰正参院議員は在宅起訴、4千万円を超える谷川弥一衆院議員(いずれも自民離党)も略式起訴となった。また販売ノルマ超過分を派閥に納めず、手元にプールしたとして、二階派の二階俊博会長の秘書も略式起訴された。
 一方、安倍派の実力者「5人組」を含む幹部7人の立件は見送られた。主体的関与を裏付けられず、共謀には問えないと判断したという。現行規正法の穴、限界を露呈したといってよい。検察当局は手口や金額などで立件の「線引き」をしたとみられるが、それでも処分が広範囲に及んだことは、自民党全体の問題であることを示していよう。
 捜査は一区切りついた形だが、もちろん問題の幕引きとはならない。渦中の政治家はこれまで、検察の捜査を理由に国民への説明を避けてきた。司法手続きとは別に、道義的にも職責としても、事実関係を自ら明らかにする必要がある。
 自民党の政治刷新本部は、公選法の「連座制」のような罰則強化や、パーティー券購入者の公開基準拡大などを俎上(そじょう)に載せる。岸田首相が岸田派の解散を検討する意向を表明したのに続き、二階派、安倍派が派閥解散を決めるなど波紋が広がる。
 所属する国会議員には今後の政治活動に関わる大きなテーマなのだろうが、いずれも当然の方向性にすぎない。どこまで自らの議論で襟を正す姿勢を示せるか。むろん、問題を自ら検証し、再発防止策を決めることは重要だが、それだけでは不十分だ。実行こそが求められる。
 自民党は1989年の「政治改革大綱」で、政治とカネ問題を「政治不信の最大の元凶」と認識し、派閥の問題点も指摘している。それを徹底できず、また同じ問題を繰り返した。不信払拭への道のりは遠い。

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