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2024.01.19 08:00

小社会 真冬の震災

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 神戸市の東遊園地で毎年開かれる「1・17のつどい」を訪ねたのは6年前だった。その年に竹灯籠が形作った文字は、忘却にあらがう「伝」。夜明け前の暗闇に冷たい雨が降り、酷な寒さでひき始めの風邪をこじらせた覚えがある。

 大地震と寒さは悪夢の組み合わせになる。作家、玉岡かおるさんは兵庫県の自宅で阪神大震災に遭った。その直後、彫刻家の友人が出した葬儀の様子を随筆に書いている。

 友人は住居もアトリエも制作中の作品も失った。がれきの下から助けられた父が亡くなり、避難所の寒さに耐えかねた母も肺炎で失った。「私にはもう、今日ここに集まってくださった皆さまの友情だけしか残っていません」(月刊神戸っ子「作家たちの大震災」)

 能登半島地震の被災地も、2月にかけて過酷な寒さが続く。助かった命を災害関連死から守る2次避難が進んでいる。テレビでは、仕事で地元に残る息子が、年老いた母親を暖かい地域へ避難させる決断が流れていた。母は「別れたくない。寂しい」。胸が詰まった。

 半島、過疎地の被災は近年の震災とはまた違った顔も見せる。限られた道路の寸断。被害の把握さえままならない。個人的なボランティアも控えてと呼び掛けられた。ふと、道路の選択肢が乏しい高知にも置き換えてみる。

 ことし、神戸の竹灯籠は連携を示す「ともに」を描いた。震災のたびに、ともに考えておくべき課題も増えていく。

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