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2024.01.19 08:00

【柿沢議員起訴】選挙の公正損なう買収

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 選挙の公正が損なわれては民主主義は立ちゆかない。現金を配って買収した罪での立件を真剣に受け止める必要がある。不信感を増幅させてはならない。
 東京地検特捜部は、公選法違反(買収など)の罪で前法務副大臣で衆院議員の柿沢未途容疑者=自民党を離党=を起訴した。昨年4月の東京都江東区長選を巡り、買収目的で約280万円の供与や申し込みをしたとされる。起訴内容を認め、議員辞職の意向を示しているという。
 また、保守分裂となった区長選で柿沢被告が支援した木村弥生前区長=辞職=も、元区議に100万円を提供したなどとして同法違反罪などで在宅起訴した。ほかにも柿沢被告の秘書や、現金を受領したとされる区議らを立件した。
 柿沢被告の起訴内容は、秘書と共謀して区長選前の2月ごろ、区議ら5人に計100万円を供与し、別の3人に計60万円の供与を申し込んだなどとしている。また、区長選期間中、木村被告と共謀して有料のインターネット広告を約37万円で掲載した罪でも起訴された。柿沢被告は昨年10月に法務副大臣を辞任した。
 前回衆院選で、柿沢被告は無所属で5期目の当選をし、自民が追加公認した。関係の近い区長の誕生を主導して、地盤固めを図りたいと柿沢被告が思っても不思議ではない。
 現金提供について柿沢被告は、当初は買収目的を否認し、区長選と同日程で実施された区議選の陣中見舞いと説明していた。だが、この金額が一般の感覚になじむとは思えず、票の取りまとめを期待したとの疑念は拭えない。その後、共に逮捕された4人の秘書とともに買収の意図を認めているという。
 公選法違反は民主主義の根幹を揺るがせる。受領側を含めそれを容認しない特捜部の姿勢を示したと言える。参院選広島選挙区の買収事件では、当初は受領側の県議らを一律不起訴にした。検察審査会の議決を経て処分は覆ったが、強い批判を受けたことも関係しているだろう。
 今回立件された金額は、自民党の政治資金パーティーの裏金事件で取り沙汰される金額と比べると少額ではある。もちろん金額の問題ではないが、それだけ裏金事件の重大性が際立ち、金権体質を浮かび上がらせる。こちらの「政治とカネ」問題に特捜部はどう対応するのか、関心が集まるのは当然だ。
 政治資金収支報告書への不記載などで派閥の会計責任者らは立件する方針とされる。だが、派閥ぐるみの慣行が疑われている。派閥側の責任者の関与が不透明なままでは納得は得られはしない。
 裏金がどう使われたのかは焦点だ。使途に踏み込まなければ裏金づくりを断ち切ることは難しいだろう。裏金が選挙資金となった事例もあるとされる。大きな問題だ。
 岸田政権が発足してからの2年余りで、自民に所属した議員の逮捕や起訴は4人に上る。不信の払拭には抜本的な改革が欠かせず、そのためには全容解明が求められる。

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