2024.01.17 08:00
【ダイハツの不正】信頼裏切る付けは大きい
指定取り消しで業績への影響が拡大、長期化することは必至だ。コンプライアンス(法令順守)を軽視し、ドライバーらの信頼を裏切った付けは、それだけ大きかったといわざるを得まい。
新車は本来、運輸支局などに車両を持ち込み、安全性などの検査を1台ごとに受ける必要がある。ただ、国交省が型式指定をした車はメーカーが検査すれば、持ち込みを省略できる。型式指定は車の大量生産・販売には不可欠な制度だが、一連の不正はその信頼性に関わる問題といってよい。
ダイハツは内部通報を機に不正を把握し、昨年4月に公表。その後、第三者委員会による調査で相手方ブランドによる生産(OEM)を含めた64車種で不正が見つかった。車に加工を施すなど不正な条件で試験したり、別データを使って書類を偽装したりしたという。昨年末に全車種の生産・出荷を停止した。
国交省は同社への立ち入り検査に加え、保安基準の適合性確認試験を進めてきた。型式指定の認証を取り消すのはダイハツ「グランマックス」、トヨタ自動車ブランドで生産する「タウンエース」、マツダブランドの「ボンゴ」。ほかの車種も必要に応じて処分を検討する。ユーザーが引き続き使用しても法令上の問題はないとした。
第三者委の報告書をみると、トヨタグループ全体の企業統治が大規模不正の背景に浮かび上がってくる。不正は30年以上前にも確認されたが、2014年ごろから急増。トヨタはダイハツを16年に完全子会社としており、生産委託が拡大した時期とちょうど重なる。
ダイハツは短期、低コストの車種開発が「強み」とされたが、その実績でさらに短期開発を迫られた。その中で試験を担当する安全性能部署の人員も削減され、現場は不正へと追い込まれていったという。
トヨタグループでは一昨年、日野自動車で燃費性能などに関する認証試験のデータ改ざんが発覚、昨年3月にも豊田自動織機でフォークリフト用エンジンの排ガスを巡る不正があった。さらに今回のダイハツと、型式指定の取り消しが続く。グループ全体で現状を重く受けとめなければならない。
電気自動車などの拡大で世界的な競争は激化する一方とはいえ、企業統治の在り方にどこか無理があったのではないか。
型式指定の再取得には長い期間を要する。小型車に強みを持つダイハツの不正で、グループ戦略の見直しも求められよう。この機会に安全性や品質の管理をしっかりと見つめ直す必要がある。ものづくりの原点が揺らいだままでは信頼回復はおぼつかない。