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2024.01.17 08:00

小社会 1・17

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 1月17日は阪神大震災の日として知られるが、ことしは歴史上のもう一つの出来事にも思いを巡らしてみたい。1874(明治7)年のこの日、板垣退助らが国会の開設を求める「民撰議院設立建白書」を提出した。

 ことしで150年になる。日本には国会もなければ、人民の権利や国の仕組みを定めた憲法もなかった時代。高知の先人たちが活躍した自由民権運動はここに始まる。先日から本紙で連載も展開している。

 民権家は官僚による専制を廃し、民主主義を求めた。文明国の理想像を熱心に追究した時代といっていいだろう。民間の憲法私案が全国各地で作られたことからも分かる。人権や自由、平等を盛り込み、選挙制度も考えた。

 ところが、歴史は皮肉である。日本は憲法や国会開設が実現した後も、民権家が思い描く国にはならなかった。むしろ度重なる戦争で国内外の人権を踏みにじった。その教訓は戦後の新憲法に生かされはしたが…。

 「自由民権運動はまだ終わってはいない」「現代の私たちに切実な課題としてひきつがれている」。1981年の著書でそう論じたのは日本近代史の研究者、色川大吉さんだった。

 泉下でいまも同じ思いに違いない。出自や性の差別はなくならず、沖縄米軍基地問題は民意や平等とは何かを問い掛ける。軍備増強は続き、投票権を放棄する有権者が増えた。追い求めた民権と150年の現実。重いもう一つの1・17である。

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