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2024.01.16 08:00

【陸自の靖国参拝】批判免れない組織的行動

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 安全への願いとは言っても、特定の宗教施設に対する参拝を組織的に計画して公務で行うとなると容認できない。事実関係を明らかにすることが重要だ。組織への信頼に関わることであり、批判を向けられない体制を構築する必要がある。
 陸上自衛隊の幹部ら数十人が靖国神社を集団で参拝した。防衛省によると、陸自の航空事故調査委員会の関係者で、新年の安全祈願として陸自の担当部署が参拝の実施計画を作成していた。
 防衛省は通達で、宗教の礼拝所を部隊として参拝することや、隊員に参加を強制することを禁じている。これまでにも通達違反で関係者が処分された事例がある。
 今回の参加者は聞き取り調査に対し、公式参拝的な意味合いで参拝したわけではないとの説明をしている。時間休を取得した勤務時間外の行為で、いずれも私服で訪れる対応をとっていたようだ。
 しかし、一部幹部は移動に公用車を使った。能登半島地震に対応するため、速やかに職務に戻る必要があったと説明している。その必要性は分かるが、対応に集中したいのであれば参加しない選択もあったのではないか。
 そもそも実施計画は行政文書と位置づけられ、保存されているという。参拝は私的な行為とは言い難く、公務の色合いが強くなる。明確にすべきことだ。
 防衛省は通達に違反する可能性があると判断し、計画内容や参拝実態の調査をする考えを示している。木原稔防衛相は「誤解を招く行動は控えなければならない」と述べている。だが、誤解の問題ではなく、違反が指摘される行為が行われたことと向き合うことが大切だ。
 もちろん、信教の自由は自衛隊員も保障されている。靖国神社への私的参拝に問題はない。太平洋戦争などで戦死した旧日本軍の軍人や軍属ら約250万人が「英霊」として祭られて、日常的に訪れる自衛官も多いとされる。
 一方、極東国際軍事裁判(東京裁判)のA級戦犯14人が合祀(ごうし)され、政治家らの参拝に「過去の侵略戦争を美化する」などと内外から反発が上がる。外交関係が長期間冷え込む事態も招いてきた。自衛隊の組織的な参拝となると、強い批判が向けられることは間違いない。
 日本は厳しく複雑な安全保障環境に直面している。インド太平洋地域で台頭する中国の軍事動向や、ミサイル技術の高度化を図る北朝鮮などと向き合っている。
 政府は防衛費の大幅増額を打ち出した。また安保戦略を見直し、敵国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有にも踏み込んだ。防衛の重要性に意識が向かっているとはいえ、国民への説明と理解が深まらないまま、前のめりの姿勢が際立っている。
 こうした中で、靖国神社との関係を組織的に強めようとすれば自衛隊への見方も変わりかねない。厳格な姿勢で臨む必要がある。

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