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2024.01.14 08:00

【辺野古工事】強行をやめ対話を重ねよ

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 昨年末、司法は国と沖縄県の対話を促したのではなかったか。県側が求める対話に応じないまま着工した政府の対応は、またも「問答無用」のそしりを免れまい。
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に向け、政府が軟弱地盤がある大浦湾側の工事に着手した。移設計画は、日米合意から約28年を経て新たな局面に入った。
 福岡高裁那覇支部は先月、軟弱地盤改良工事の設計変更を玉城デニー知事が承認しないのは違法だとして、国が承認を求めた代執行訴訟で知事に承認するよう命じた。
 それでも知事は承認せず、国土交通相が承認を代執行。「対等・協力」の関係にあるはずの国が自治体の権限を奪うという地方全体が重くみるべき初の代執行の末、わずか13日後に工事に踏み切った。
 判決は、投票者の7割超が「辺野古ノー」の民意を示した県民投票の結果などから「民意こそ公益だ」とした県側の主張を退け、普天間の危険性除去を公益として国側の主張を追認した。
 民意や自治を尊重する観点から違和感を拭えない判決だが、付言では「国と県が相互理解に向けて対話を重ね、抜本的解決が図られることが強く望まれている」とも促した。ところが、代執行後の岸田文雄首相と知事の面会は実現していない。
 政府は、普天間の危険性除去には「辺野古移設が唯一の解決策」との立場を堅持している。ただ軟弱地盤改良工事を伴う設計変更で、移設計画は当初とは「別物」になっている。さまざまな疑問が拭えないのは地元の沖縄県だけではあるまい。
 政府が当初、示していた工期は5年。普天間返還は「2022年度またはその後」と説明していた。このスピード感が「辺野古が唯一」とする主張を支えていた面もあった。
 設計変更後の地盤改良では、砂を固めたくい約7万本を海面から70メートルの深さまで打ち込む必要がある。「国内で前例がない」とされる工事は難航が予想され、実現性への懸念は根強い。
 政府の計画では工期は9年3カ月で、移設事業の完了は早くても30年代半ば以降となる見通しだ。実現したとしても、完了までの長期間、普天間の危険性は残される。
 当初は3500億円以上としていた総工費も約2・7倍の約9300億円に膨らんだ。沖縄県の見立てでは2兆円を超える。国民の負担が増え続ける懸念も拭えない。
 こうした多くの疑問に対し、政府は沖縄のみならず国民全体への説明を尽くしているだろうか。
 故翁長雄志知事はかつて、安倍政権の強硬姿勢を米占領下の沖縄で強権を振るったポール・キャラウェイ高等弁務官に重ね、「問答無用という姿勢が感じられる」と批判した。
 「聞く力」「丁寧な説明」を掲げる岸田首相も、沖縄の基地問題でも言葉と裏腹の対応と言われても仕方があるまい。政府は工事の強行をやめ、県や米国との対話で抜本的な解決策を探るよう重ねて求める。

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