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2024.01.09 08:00

【新年に 外交・安保】国際情勢に増す不透明感

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 地球温暖化対策など協調して取り組むべき課題に直面しながらも、国際社会に横たわる溝はさらに深くなっている。今年は米ロの大統領選に加え、台湾総統選も予定される。その行方次第で不透明感が増し、日本の外交や安全保障のかじ取りが一層難しくなりかねない。
 ロシアによるウクライナ侵攻は来月で丸2年となる。ウクライナ軍は反転攻勢を期したものの、戦線は膠着(こうちゃく)状態に陥り、和平の兆しは見えないままだ。
 戦闘の長期化は、じわりと国際情勢に変化をもたらす。ロシアは中国のほか、核ミサイル開発を進める北朝鮮とも連携。ウクライナを支援する米欧など民主主義諸国との対立は一段と鮮明になった。
 一方、ウクライナを後押しする米欧には「支援疲れ」が広がる。欧州連合(EU)はウクライナの加盟交渉開始で合意したが、各国の立ち位置の違いから、一枚岩とはいいがたい。最大の支援国である米国は、議会下院の多数派を占める共和党が支援に消極的な姿勢を見せ、支援予算の枯渇が現実味を帯びる。11月の米大統領選は支援の在り方を大きく左右しよう。
 パレスチナ自治区ガザで昨年10月に始まったイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘は、国際社会の混迷に拍車をかけた。国連の安全保障理事会は再び機能不全を露呈。国際社会が手をこまねいている間に、民間人の犠牲者は膨らみ、人道危機は悪化し続けている。
 遠い地での紛争は、日本の安全保障とも無縁ではない。結びつきを強める中ロは日本周辺での合同軍事活動を活発化させ、日米韓の連携をけん制する。中国は東・南シナ海で力による一方的な現状変更の試みを継続。沖縄県・尖閣諸島周辺の領海へ侵入を繰り返す。
 そうした状況下で今月、台湾総統選が行われる。武力統一の可能性を否定しない中国が威圧を強め、地域の情勢がより不安定化する懸念は尽きない。
 岸田政権は国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に伴い、財源も定まらないまま防衛力の増強に突き進む。防衛装備品の輸出ルールも大幅に緩和。殺傷能力のある武器の輸出へ道を開いた。
 民主主義諸国との連携を強める狙いもあろうが、米国が主導するインド太平洋戦略、日米豪印による協力枠組み「クアッド」などの対中包囲網に中国も反発を強めている。現実的備えは必要としても、一方では融和を図り、安定した関係を構築する努力が欠かせない。
 岸田文雄首相がライフワークとする核軍縮も、分断拡大で後退しているのが実情だ。核拡散防止条約(NPT)体制は機能不全が続き、核兵器の使用さえちらつかせるロシアは新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止した。中国も核戦力の増強に余念がない。唯一の戦争被爆国である日本も、抑止力論とは別の発想から「核兵器なき世界」への貢献が求められよう。

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