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2024.01.08 08:00

【新年に 経済】停滞脱却への動きを強く

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 日本経済は低成長が続き、国内総生産(GDP)は円安も反映されて世界4位へと転落しそうだ。国際通貨基金(IMF)は2026年にもインドに抜かれて5位に後退すると予測する。日本の地盤沈下が進む。
 いかに食い止めるか、重い課題がのしかかる。産業基盤を強固にして、国民生活を底上げする取り組みが欠かせない。停滞が続けばじり貧をたどることになる。
 経済に重点を置くと岸田文雄首相は訴えている。能登半島地震の影響も無視できず、変化をにらみながら実効性のある施策を重ねていくことが重要だ。安易な対策は財政を損なって施策の柔軟性を奪い、将来の大きな負担となってしまう。
 歴史的な物価高が暮らしを圧迫している。24年春闘は、賃上げの継続とその全国波及が問われる。23年の春闘は企業の積極姿勢を反映して高水準を記録した。しかし、物価高騰に追いつかず、実質賃金はマイナスが続く。
 5%以上の賃金アップを目指す連合に、経営側も一定の理解を示す。ただ、人手不足が深刻化する中、人材確保に前向きな企業がある一方、業種によっては資材高騰など逆風にさらされる企業もあり、取り組みには濃淡がある。国内の労働者の7割近くが勤務する中小企業に波及するかが重要な意味を持つ。
 大規模な金融緩和を維持している日銀は、早期の政策転換を求める声が出る中、春闘の賃上げ動向を見極める姿勢を見せる。賃金と物価が持続的に上昇する可能性には触れつつ、慎重姿勢を崩さない。
 日銀が市場から購入した国債の累計額は1千兆円に達し、市場に出回る国債の半分を持つ状況となった。景気の下支えを狙ったが、市場で決まる金利をゆがめていると批判は根強い。日米の金利差が円安の要因となり、輸入物価を押し上げることにもつながった。欧米の金融政策が転換点を迎える中、緩和策の修正にいつ踏み込むかが焦点となる。
 供給網が混乱するリスクは、新型コロナウイルス禍からの経済活動の立ち直りやロシアのウクライナ侵攻などで強く意識されるようになった。中東情勢の緊迫化を受けて海上輸送が再び混乱している。国内でもドライバーの残業規制強化で物流危機が懸念され、警戒が欠かせない。
 世界経済は分断の傾向を強めている。中国は産業に必要な重要鉱物の輸出を制限するなど経済活動でも威圧的な姿勢を見せる。スパイ行為の定義を拡大して対中投資を萎縮させた。東京電力福島第1原発の処理水放出でも日本産水産物の全面禁輸の強硬姿勢をとった。
 米国は投資や半導体を巡る規制を強化するなど脱中国依存を進める。日本政府が力を入れる半導体国産化の動向も注視する必要がある。
 中国は一方で、日本の最大の貿易国という側面がある。日中は先の首脳会談で、戦略的互恵関係の包括的な推進で一致した。意思疎通を密にして、新しい関係を構築する努力の重要性が増している。

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