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2024.01.08 08:00

小社会 空気と水

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 年をまたいだ自民党派閥の裏金疑惑は、衆院議員の逮捕に発展した。当初、ある政務三役が口にした認識が引っ掛かっている。「大丈夫かなと思ったが、長年やっているのなら適法なのかなと」。そういうものだという空気が派閥を支配していたのか、これ幸いと倫理もまひしていったのか。

 山本七平著「『空気』の研究」を少し思い出している。戦争末期の「無謀」とされた戦艦大和の出撃について、生き残った責任者の一人はこう語った。「全般の空気よりして、当時も今日も特攻出撃は当然と思う」

 合理的な判断ではなく、物事は「空気」が決める。いまの世の職場や地域社会でも、思い当たるところはありそうだ。全体の流れ、暗黙の了解、その世界の常識…。空気が絶対権を持つ組織の議論はしばしば失敗を招く。

 そんな空気を崩壊させるのは、「水を差す」自由だという。水とは、具体的な目の前の障害を指す。それを口にすることで、人々を現実に引き戻す。もっとも山本さんの著書は、日本人にとっての「水」の研究も続くのだが。

 岸田首相が今週、党の政治刷新本部を発足させる。若手や有識者も交えるというが、顧問には派閥の領袖(りょうしゅう)の名前も報じられる。ゆがんだ派閥の在り方に水を差す議論ができるかどうか。

 きのうの本紙に、国会議員を信頼していない人が83%に達した調査が載っていた。世間の冷ややかな空気を自覚した議論が欠かせまい。

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