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2024.01.05 08:00

【新年に 政治】国民の監視で緊張感を

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 リクルート事件で国民の政治不信が頂点に達した1989年、自民党が党議決定した「政治改革大綱」には、こんな文言が並んでいる。
 〈政治と金の問題は政治不信の最大の元凶である〉〈国民感覚とのずれをふかく反省し…「政治は国民のもの」と宣言した立党の原点にかえり…〉〈いまこそ自らの出血と犠牲を覚悟して、国民に政治家の良心と責任感をしめす〉
 いまの政治状況と酷似してはいないか。35年前の教訓と決意は生かされず、国民感覚とのずれ、政治不信はまた頂点に達しているように映る。自民党の国会議員はいまこそ大綱を再読すべきだろう。
 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が昨年末、検察による強制捜査に発展した。岸田政権の中枢に波及した「政治とカネ」の問題は越年。政治家への捜査がどこまで広がるのか、見通せない。
 岸田文雄首相はこの年明けに、改革に向けた党の新組織を設置するよう指示している。政治資金規正法の改正や派閥の在り方を議論すべきなのは当然だろうが、首相の対応は腰が重い。具体的な改革の方向性は定まっていない。
 今回の疑惑でも、議員自らが説明責任を果たす姿勢は見えてこない。捜査を理由に口をつぐむ政治家の姿は、「国民に政治家の良心と責任感をしめす」決意とは程遠い。
 物価高にあえぐ中、防衛増税など負担増の方向性が示されている国民の「政治とカネ」に対する視線は一段と厳しい。捜査に委ねるだけではなく、自浄作用を発揮しなければ政治不信は深まるばかりだろう。
 「聞く力」「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明」を掲げて就任した岸田首相の政権運営は3年目に入った。
 ところが、その言葉と裏腹に防衛力強化や原発回帰、殺傷能力がある武器の輸出と国民的議論を欠いたまま重要政策が次々と決まっていく。
 国民の疑問の本質がうやむやのままにされることも少なくない。
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題もその典型だろう。安倍晋三元首相の銃撃事件で自民党と教団の関係が問題視されて以降も、安倍氏らとの関係や、地方議員との関わりといった実態の調査は進んでいない。
 自民党は「政治は国民のもの」という立党の原点、岸田首相も国民の声を聞き、「語る力」を発揮しようという首相就任時の原点と誠実に向き合う姿勢を求める。
 国民感覚とのずれでいえば、国会全体の課題にも触れておきたい。国会議員の特権で、月100万円が支給される「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)の本質的な見直しが2年以上、放置されている。「政治家の良心と責任感」を示すべきは自民党だけではあるまい。
 昨年は本県でも各種選挙で低水準の投票率が続いた。緩み、おごる政治に緊張感を持たせるには、国民の監視の目が欠かせない。政治をしっかりと見つめる1年にしたい。

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