2024.01.04 08:00
小社会 見たくない炎
火は、人間が文化を持つ動物へ進化を遂げるために欠かせない道具だった。野焼き、獣の駆り出し、漁(いさ)り火。ただ、制御しきれない炎は恐怖を伴う。俳人、土肥あき子さんは冒頭の句にこう論評を加える。「炎を手にしたときから、人間はさまざまな選択を迫られ続けている」
戦火ではない。だが、年明けから2日続けての炎の映像に息をのんだ方も多かったのではないか。能登半島地震によって、約200棟が燃えた「輪島朝市」周辺の火災。一昨日は羽田空港に着陸した日航機が海上保安庁の航空機と衝突し、炎に包まれた。
日航機の乗客乗員は全員が脱出し、命に別条はなかった。緊迫下、短い時間での避難には海外メディアからも「奇跡」の声が上がっている。一方の乗員5人が亡くなった海保機は、地震の対応で支援物資を運ぶ途中だった。二つの炎につながりがあったかと思うと、やるせなさも募る。
航空機が着陸してくる滑走路上に別の機がいたという、あってはならない事故である。帰省先からのUターンで混雑する中、不安を膨らませた利用客も多いだろう。原因究明と再発防止策を徹底してもらいたい。
ともかく、人間が制御できていない炎はもう見たくない年明けになった。むろん、海外の戦火も含めて。