2024.01.03 08:00
小社会 「1・1」の地震
その作中、災いの源として描かれるのが「ミミズ」という存在。登場人物が説明する。「日本列島の下を蠢(うごめ)く強力な力だ。目的も意志もなく、歪(ひず)みがたまれば、ただ暴れ…」
せりふのように人間の都合などお構いなしにミミズは出た。誰もが穏やかに過ごしたいと思う元日の夕刻、北陸地方で扉をあけた。
大津波警報が出たのは、実質的に「3・11」以来になる。テレビの絶叫調の避難の呼び掛けが緊張感を駆り立てた。津波以上に揺れの被害が大きく、時間とともに犠牲者数が増える。大震災を教訓に何ができ、何ができなかったのかが焦点になるが、今はとにかく犠牲者を悼み、被災地の安心・安全を祈るばかりだ。
発生から一夜明けた昨日、高知市の商店街を歩いた。初売りが混み合うなど例年通り穏やかな年始の光景だった。ただ、内心穏やかでない人もいただろう。ミミズは南海トラフに出てもおかしくない。
新海監督は3・11のとき、被災の当事者にならなかったことに「後ろめたさのようなもの」を感じたという。その上で、自分なりの関わり方を追求した結果が作品になったと、NHKの番組で語っていた。「1・1」という特別な日に起こった災害に、県民はどう向き合うか。