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2023.12.31 08:00

【ライドシェア】安全性と利便性の両立を

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 「安全性の確保」と「利便性の向上」を両立させることができるか。きめ細かい制度設計が求められ、運用開始後の検証も重要になる。
 一般ドライバーが自家用車を使って有料で客を送迎する「ライドシェア」が来春、部分解禁される。
 ライドシェアを巡っては、移動が便利になるとの期待の一方、運転の安全性確保を懸念する声があり、既存の交通機関の経営を圧迫しかねない要素もある。
 このため政府は、既存のタクシー会社が運行管理業務を担う独自の仕組みを採用し、それぞれの懸念に配慮した。都市部や観光地を念頭に、タクシーが足りない地域や時間帯に運行を認める。運行管理業へのタクシー会社以外の参入については引き続き議論を続けるという。
 ライドシェア導入の背景には、タクシー運転手の不足がある。2010年度には全国に40万人弱いたが、22年度は約24万人にまで減少。観光地などで移動需要に応えられない事態が生じている。導入を求める声が高まり岸田文雄首相が10月、検討する考えを表明していた。
 ライドシェアは既に米国や中国、東南アジアなどで広がっている。スマートフォンの配車アプリを通じてドライバーと乗客を結び付けるのが一般的だ。日本では、マイカーによる運送は「白タク行為」として原則禁止されているが、過疎地などで例外的に「自家用有償旅客運送」制度が認められている。今回はその枠組みを広げた。
 一般ドライバーの運行では、健康確認や車両整備が不十分だったり、事故時の責任があいまいになったりする可能性がある。このため「日本版」は運行管理をタクシー会社が行う。海外ではアプリ会社が担うことが多く、それに比べれば安全性を重んじた方式だといえる。さらに、タクシーが足りない場合に一般ドライバーの自家用車を配車する仕組みとし、経営面にも配慮する。
 ただ、タクシーと同水準の安全性を確保するには相応の手間とコストが必要になる。タクシー会社にとって運行管理業務を引き受けるメリットがあるとも限らない。タクシーを補完するような働き方で一般ドライバーを呼び込めるかも課題であり、制度が機能するにはより幅広い視点での検討が求められる。
 ライドシェア推進派からは、「日本版」では現状の移動能力不足を補うには不十分だとして、タクシー会社以外の新規参入など早期の全面解禁を求める声がある。
 移動の自由、選択肢が広がるのは望ましいが、それによって既存の交通機関が疲弊して衰退してしまっては本末転倒になりかねない。全面解禁に向けては運用開始後の状況をしっかり見極めていくべきだ。
 政府は今回、過疎地など交通が不便な地域で認めている自家用車の有償運送制度も、改善して使いやすくするとした。高知県でも中山間地域の住民の足は大きな課題だ。安全性を担保した上で、機能的な仕組みを練り上げてもらいたい。

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