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2023.12.30 08:00

小社会 歳末の風物詩

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 ここ数日の県内は、歳末らしくない暖かさが続く。歳末を歳末らしく感じないのは天候のせいだけではないのかも。餅つきなど地域の行事はめっきり減り、大掃除やおせち作りなども、より手軽に、より簡単にとの風潮だ。季節を感じるのが意外と難しい。

 今冬は、高知市民の正月準備を支えてきた「しめ縄市」も姿を消した。年の瀬になると毎年、追手筋に門松やしめ縄、餅などの露店が並び、にぎわう光景は風物詩だった。

 その歴史は60年以上あり、最盛期は120店が出た。しかし、出店者の高齢化などで昨年は4店にまで減り、中止を決めたという。

 しめ縄市には過去にも存続の危機があった。2005年に市役所が運営管理から手を引いた時だ。この時、日曜市文化にも通じる「田舎らしさ」「人のつながり」が再評価され、存続の署名活動なども起こった末、自主運営で再出発した経緯がある。

 あのとき、あれだけ大事にされた市(いち)が、今度は静かに消えていった。時代の流れを物語る。消費者の生活・購買スタイルの変化はもちろん、人口減少と地域衰退のうねりの中で生産者もいなくなった。

 往時はにぎわった年末の追手筋を、きのう歩いた。実家が市(いち)の近くだった筆者は幼少時からなじみがあり、昨年も餅を買った。あれが最後の買い物になった。がらんとした通りから目線を上げると、澄み渡る冬空が広がる。〈年の瀬や 続く天気にはげまされ〉星野立子。

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