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2023.12.25 08:00

小社会 金銭感覚

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 文士にはどこか金銭感覚がおかしい人が少なくないようだ。〈兵隊の死ぬるや あわれ 遠い他国で ひょんと死ぬるや〉。有名な「骨のうたう」を残し23歳で戦死した詩人、竹内浩三もその一人だろう。

 東京で映画監督を夢見る学生だった頃、郷里の三重にいる姉に盛んに金を無心した。手紙の一つに「金がきたら」というのんきな詩を添えている。金がきたら、げたや花瓶、レコード入れを買おう…。

 締めはこうある。〈金がきたら 金がきたら ボクは借金をはらわねばならない すると 又(また) なにもかもなくなる そしたら又借金をしよう…金は天下のまわりもんじゃ〉。弟への愛情深い姉も、さすがに「浩三さん よく考えて下(くだ)さい」と書き置きで諭した(稲泉連著「ぼくもいくさに征(ゆ)くのだけれど」)。

 年の暮れに借金の話になったが、こちらはまひしてはなるまい。政府の来年度予算案。これまでの借金の返済や、金利上昇による利払い負担で国債費が過去最大になった。返済に追われ、必要な政策に予算を割く余力を失う恐れが強まる。

 岸田政権が打ち出した防衛力強化や少子化対策も、財源の裏付けは後回し。支持率の低迷で、国民に新たな負担は言い出せない空気なのだろう。かといって、「そしたら又借金をしよう」では将来世代にも無責任にすぎる。

 政界は裏金疑惑の動揺が続いている。どうも政権党の金銭感覚が心もとない年の瀬ではある。

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