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2023.12.25 08:00

【予土線の今後】幅広い視点で議論深めよ

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 車窓から四万十川を眺めてのんびりと―。そのような鉄路の情緒はこれからどうなるのだろうか。
 経営難のローカル鉄道の存廃協議を国が主導する「再構築協議会」制度が10月に導入され、四万十町と愛媛県宇和島市を結ぶJR予土線の行方が注目されている。
 予土線はJR四国の路線の中で最も経営効率が悪く、協議の対象候補に挙がる。JR側の動きは現時点で具体化していないが、協議会設置を視野に入れているとみられる。
 沿線の自治体や住民にすれば、廃線がちらつく以上、安易にテーブルにつけないのが実情だろう。だが、利用客が減る中、将来像を人任せにしたままでいては無責任と言われかねない。再構築協議会を設けるかどうかにかかわらず、地域交通の在り方について幅広い視点で議論を深めていく必要はある。
 来春に開通50年となる予土線(76・3キロ)は、もともと沿線人口は多いとは言えず、人口減少や車社会の進行で利用者が減少。経営効率を示す指標の悪さは、JR四国の8路線18区間の中でも突出する。
 再構築協議会の制度化はこうした路線が念頭にある。地元自治体が協議入りを警戒しがちな中、事業者の要請に応じて国が調整役となり、廃線を前提とせずに話し合う。鉄道を残す場合もバスに転換する場合も、国が財政支援をする。原則3年以内に方向性を出すとしている。
 JR西日本は制度開始後ほどなく芸備線(岡山県新見市―広島市)について協議会設置を要請した。全国的に公共交通再編のうねりは強まっており、鉄道経営は一つの転機に差し掛かったといってよい。
 予土線についてJR四国は現在、「入り口の議論をしたい」との表現にとどめる。すぐに再構築協議会の話には踏み込まず、前段として「どんな場でどんな協議をするか意見交換したい」との姿勢だ。自治体との間合いを探っているのだろう。
 早晩、具体的な提案をしてくる可能性はある。ただ、国やJRは、四国の鉄道ネットワークの位置づけに関して、基本的な考え方を整理してから臨むべきだ。
 そもそも、再構築協議会が制度化されたきっかけは、大都市の路線や新幹線で上げる黒字で赤字路線を担うというJR旅客大手のビジネスモデルが、新型コロナウイルス禍で崩れたことだった。
 しかし、経営環境が厳しいJR四国や北海道は、国の支援を前提に国鉄民営化した経緯がある。大手と同列で捉えるのは無理がある。四国の鉄道はどういう姿が望ましいのか。その中で国はどういう責任を果たすのか。そうしたことを自治体側に示す必要がある。
 自治体側は、鉄道の移動手段としての役割はもとより、歴史、文化、まちづくりなどの観点から存在意義を掘り下げていきたい。
 今後の展開は見通しにくいが、どういう形になるにせよ、JRと地元自治体の互いの信頼関係が基本となる。丁寧なやりとりが求められる。

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