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2023.12.24 08:00

【辺野古代執行】民意と自治の軽視を危惧

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 地域住民がいくら反対の民意を示しても、国策の下では国は強硬手段が許されるのか。今回の判決が国が民意を軽視し、自治体の権限を奪う先例にならないか、同じ地方の住民として危惧する。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更を玉城デニー沖縄県知事が承認しないのは違法だとして、国が承認を求めた代執行訴訟で福岡高裁那覇支部は知事に承認するよう命じた。
 期限は25日に設定され、知事が従わなくても国土交通相が承認を代執行。政府は軟弱地盤がある大浦湾側の工事着手が可能になる。県側は最高裁に上告できるが、逆転勝訴しない限り工事は止められない。辺野古移設は新たな段階に入った。
 国と地方は1999年の地方自治法改正で「上下・主従」から「対等・協力」の関係に転換した。翌年の地方分権改革で導入された代執行の要件は厳しい。他に手段がない場合に例外的に認められるため、これまで代執行に至った事例はなかった。
 訴訟は、玉城知事が設計変更を承認しないことが、要件となる「著しく公益を害する」状態かどうかが争点になっていた。
 玉城知事は直近3回の知事選や、投票者の7割超が反対の意思を示した県民投票の結果から「民意こそ公益だ」と訴えた。国側は、国の安全保障と普天間飛行場の固定化回避という公益上の重大な課題が達成できないと主張していた。
 判決は沖縄戦や基地負担の歴史から「県民の心情は十分理解できる」としながらも普天間の危険性除去を公益とし、国の主張を追認した。
 ただ、「公益」の捉え方として当事者である地元の民意や、地方自治法が明記する自治体の「自主性および自立性に配慮」は考慮されたのか、違和感が拭えない。
 マヨネーズ並みとも表現される軟弱地盤の存在が表面化して以降、普天間の危険性の早期除去には疑問が膨らんでいる。
 改良工事は難航が予想される。砂を固めたくい約7万本を海面から70メートルの深さまで打ち込む必要がある。国は事業完了まで約12年とするが、専門家の間ではさらに長期化するとの見方もある。
 当初は3500億円と見込んだ総工費も、約2・7倍の約9300億円に膨らんだ。沖縄県の見立てでは2兆円を超える。国民の負担が膨らみ続けかねない状況は、「公益」として検討されたのだろうか。
 加えて在沖縄米軍幹部は先月、辺野古の滑走路は普天間より短い約1800メートルとなることに不満を表明している。「辺野古は最悪のシナリオ」として普天間の利便性の高さを強調したと報じられた。
 判決は付言で、「国と県が相互理解に向け対話を重ね、抜本的解決が図られることが強く望まれている」ともしている。国は問答無用の姿勢を改めていったん立ち止まり、県や米国との対話に臨んで真の「公益」を探るよう求める。

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