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2023.12.21 08:00

小社会 昭和南海地震77年

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 大震災の揺れ始めとはどんな感じなのだろう。やなせたかしさんは中国から復員して高知新聞に入社したての頃、昭和の南海地震に遭った。少し人とは違う反応だったことを本紙連載「人生なんて夢だけど」に書いている。

 地鳴りと大きな揺れに、相当ひどい地震だとは思った。しかし、戦地では野戦重砲兵だったので大音響や地面の揺れには慣れている。寒い冬の未明のこと。家を飛び出しておびえる家族に布団を投げて、また寝てしまった。

 夜が明けて、惨状に驚く。大地の亀裂。目の前で崩れ落ちるビル。出社すると、取材班は既に各地に飛んでいた。やなせさんは「ジャーナリストとしての反射神経が不適格と思った」。漫画家の道に転身を決意したという。

 被害が大きかった県西部などの証言はなお生々しい。ことしの秋に亡くなった市原麟一郎さんの編著に「裂けた大地」がある。昭和50年代に108人から体験談を聞き取った。

 〈天地がいっぺんに吹っ飛んでしまう様(よう)な不気味な感じ〉〈恐怖の時間は長うございましてね、ふつうの地震はすぐ止(や)むのに、長かった〉。民話には知恵や教訓が多く含まれると言う市原さんは、「地震や津波の証言も現代の民話です」。

 揺れがおさまったら、すぐ避難―。県の調査では、津波からの避難意識は上昇傾向と先日の本紙にあった。体験は遠くなるが、想像力で補って「次」に備えたい。きょうで昭和南海地震から77年。

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