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2023.12.21 08:00

【気候変動対策】問われる危機感と実行力

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 アラブ首長国連邦で開かれていた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が、「化石燃料からの脱却」を進めることなどで合意し、閉幕した。
 COPは過去、二酸化炭素排出量が多い石炭火力発電については削減の方向性を打ち出していた。それを石油や天然ガスも含む化石燃料全体に広げた格好だ。
 化石燃料の削減・廃止は地球温暖化対策の要であるが、人類はエネルギー源として化石燃料に長く依存してきた。世界各国がそこからの脱却で一致したのは画期的といってよいだろう。
 とはいえ、文書をいくらまとめても、各国が具体的な行動に移さなければ意味がない。
 世界の気候変動の被害は深刻さを増している。ことしは最も暑い1年になる見込みで、世界気象機関(WMO)によると、世界の平均気温は産業革命前から既に約1・4度上昇。1・5度に抑えるパリ協定の目標に迫っているという。
 事態はこの先も予断を許さない。締約国は今後、2035年までの排出削減を見通す次期目標の策定に入る。各国には危機感を持ち、より強力な削減目標を掲げて、それを着実に実行する力が問われる。
 今回のCOPでは、パリ協定に基づく世界の気候変動対策の進捗(しんちょく)状況を初めて評価。各国が今後つくる新たな排出削減目標の具体策も記した成果文書を採択した。
 50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするため、エネルギーシステムの化石燃料からの脱却を20年代に加速すると明記。世界の再生可能エネルギー容量を30年までに3倍にし、排出削減対策が取られていない石炭火力発電は段階的削減へ努力を加速することを盛り込んだ。
 また、現状ではパリ協定の1・5度目標は到底実現できないと指摘。世界の温室効果ガス排出量を19年と比べ30年に43%減、35年に60%減とする必要があるとした。
 どれも各国に強い覚悟が求められる内容である。それだけに会議は各国の思惑がぶつかり紛糾。会期を1日延長して調整を図った。
 化石燃料を巡る文言の調整では、海面上昇や災害に直面する島しょ国などが「廃止」を盛り込むよう、強く要求。基幹産業に打撃を受ける産油国などが反発した。
 米国を巡っては、バイデン政権が2年間で公有地での石油・ガス採掘許可を6千件以上出したことが判明。途上国などから批判を浴びた。
 日本は、岸田文雄首相が排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所の建設は終了していくとアピールしたが、肝心の既存施設の廃止には言及しなかった。
 先進国がこうした姿では途上国の排出削減も進むまい。先進国の姿勢は今後の対策の行方を占うといってもいい。
 ただ、会議は少しずつながら前進しつつある。対話と協力をより一層重ね、全世界で対策を加速させていきたい。

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