2023.12.20 08:00
小社会 そこにデパートがあった
店に行くと、ごった返しの人人人で、電話をくれた社員さんが言う。池袋店とは駅ビルも兼ねた街のごとき巨艦店舗で、比べて高知店はいわば小舟である。それが一時でも売り上げで勝つというのは、「普通あり得ないこと」だと。
その巨艦、西武池袋店のニュースを今年は何度か見聞きした。池袋店の社員はストを打って抵抗したが、親会社は米投資ファンドに売却。家電量販店の乗り込みも計画され、副都心の巨艦は危うい。
ネット通販などから寄せる時代の大波は容赦なく、業界はのまれ、経営危機が続いてきた。企業の栄枯盛衰は残酷で、不透明だ。そう思いながら追憶のフィルムを巻き戻すと、高知店が閉じた21年前と、別次元の巨艦が揺れる今現在が、ひと続きの連なる時間として見えてくる。
思えば高知店は、客と売り手が人情でつながる店だった。小舟ならではの魅力があったからこそ、最後の活況となったのだろう。時代には敗れたが、冬の灯火(ともしび)のように心の内に残る。
12月20日は日本に初めてデパートが開業した日。播磨屋橋の交差点に立ち、郷愁に浸る。そこにデパートがあった。