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2023.12.19 08:00

【日ASEAN】友好50年の関係を強固に

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 地域の安定や経済成長を維持するために、東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力関係を発展させることが欠かせない。日本とASEANが友好関係を樹立して50年を迎えた。国際情勢の変化に応じた信頼構築に努めていきたい。
 戦後の東南アジア諸国との関係は太平洋戦争の賠償から始まった。日本製品への反発が強まった時期もあったが、政府開発援助(ODA)や日本企業の現地進出などが地域の安定や経済発展につながった。
 ASEAN加盟国は10カ国になり、域内の人口は約6億8千万人となった。合計の国内総生産(GDP)は拡大し、経済規模は日本に迫ろうとしている。国により政治体制や宗教が異なる中、地道に関係改善を図り、ASEAN諸国から一定の評価を受けている。
 一方、中国が軍事面で覇権主義的な行動を強めることへの警戒感は強い。沖縄県・尖閣諸島周辺では中国公船が領海侵入を繰り返し、東・南シナ海への進出を加速している。
 地域秩序の安定は重要な課題だ。米中対立が激化する中、米国の地域への関与が薄まることが危惧される。安全保障面での協力の在り方が模索されている。
 日本とASEAN加盟国の特別首脳会議は、海洋を含む安全保障協力の強化を盛り込んだ共同声明を採択した。岸田文雄首相は、尖閣諸島周辺の現状を念頭に、日本の主権侵害に対して深刻な懸念を表明した。ASEAN側からも東・南シナ海情勢への懸念や、国際法を順守する重要性に言及があった。
 中国は経済面でも台頭が著しい。相対的にASEAN内の日本の存在感は低下している。対日貿易額は伸びてはいるものの、対中国はそれを上回る勢いを見せる。この20年余りで、対中貿易額は日本の3倍の規模にまで膨らんでいる。
 会議は、サプライチェーン(供給網)確保など経済安全保障の連携拡大にも言及した。首相は民間投資を後押しする考えを表明した。質の高いインフラ投資や次世代自動車などの産業競争力の強化を通して、地域経済の成長を促すことが重要だ。
 また会議は、中国が途上国を借金漬けにして支配を強める「債務のわな」を念頭に、国際的なルールを順守した透明で公正な開発金融の促進を訴えた。中国の強引な姿勢は容認できない。一方で経済のつながりは日本も含めて強い。各国に親米、親中の立場の違いもある。関係を断ち切ることはできないだけに、対立を先鋭化させない対応が求められる。
 共同声明は、民主主義や法の支配、人権尊重などの原則を堅持する世界を目指すと宣言した。ミャンマーでは軍政による民主派の弾圧が続き、ASEAN諸国でも軍政への姿勢に温度差がある。域内のこうした課題とも向き合う必要がある。
 日本が構築してきたASEANとの信頼を維持し、米中対立とは一線を画した立ち位置を探りながら関係を強固にしていく必要がある。地域安定へ日本の役割は大きい。

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