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2023.12.19 08:00

小社会 さよなら返杯?

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 先週末、先々週末と高知の夜のおまちはなかなかの人出だった。新型コロナ禍が明けて初の忘年会シーズン。冬着の赤ら顔の集団を見て、いつもの年の瀬が戻ってきたと安堵(あんど)した。

 それでもにぎわいはまだコロナ禍前に及ばないそうだ。さらに飲み方も随分変わり、返杯・献杯が減ったと過日の本紙にあった。ここ数年の「濃厚接触」への警戒感を考えれば、仕方あるまい。

 返杯は言わずとしれた「おきゃく」を代表する習慣。目上目下、先輩後輩を問わず杯を差し出し、受け取り、口角泡を飛ばして議論する。そのおおらかさとにぎやかさ、そして酒量に県外の人は目を丸くする。

 ただ、お酌の習慣そのものは全国共通。高知がなぜそうなったかといえば実は曖昧で、「県民性と言えばそれまでだが、本当の理由は分からない」と民俗学者の坂本正夫さんは記している(「高知県の不思議事典」)。杯を手に自由に動ける皿鉢料理の存在は関係していそうだが。

 その返杯。よく考えれば、逆風はコロナ禍だけではない。人権や多様性を重んじる社会の流れが急加速する。パワハラ、アルハラ、セクハラ。人によってそう捉えられかねない習慣は、どうしても肩身が狭くなる。

 小欄も返杯の洗礼を受けた世代。悪酔いで苦杯もなめたが、人との距離は縮められた。功罪ありつつも酒文化として受け入れてきたが…。その将来は、べろべろの神様のみぞ知るといったところか。

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