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2023.12.16 08:00

【与党税制大綱】方向性が定まらない

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 政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が政治不信を強める中、国民に負担増の痛みを押しつける状況にはないということだろう。だが、国民受けを狙う政策を打ち出しても、課題対応を先送りしては方向性が定まらない印象が強まる。これでは信頼回復はおぼつかない。
 2024年度の与党税制改正大綱は、所得税と住民税の定額減税や賃上げ税制の拡充を盛り込んだ。暮らしを圧迫する物価高に対応する。
 定額減税は1人当たり4万円で来年6月から実施する。期間は1年のみとは明記せず、賃金や物価の状況に応じて追加措置を講じられるようにした。年収2千万円超は対象外とし、中間所得世帯の負担緩和を重視する姿勢を示した。
 また、物価上昇を上回る賃上げを後押しするため、一定水準以上の賃金増加を実施した企業を対象とした法人税の減税措置を拡充する。賃上げの機運を醸成し、賃金と物価の好循環につなげることが重要だ。政治の停滞が経済活動を萎縮させないよう着実な取り組みが必要だ。
 岸田文雄首相は、税収増の一部を還元すると位置付けて定額減税を主導した。しかし、増加分は国債の償還などに使い元手はないとされ、国債の増発が避けられない。今後も歳出に税収が不足する状況は続くとみられる。国債残高は積み上がり、財政を一段と悪化させることへの警戒感は根強い。
 そもそも、減税の実施時期のずれから即効性を欠き、経済対策としての効果は懐疑的に見られてきた。このため、低迷する政権の浮揚を図りたい思惑が見透かされ、選挙目的とも取り沙汰された。
 世論は減税自体は歓迎するが、その後の増税を強く意識している。内閣支持率の低迷は、場当たり的な対応との受け止めの反映だろう。
 政府は防衛費増額へ増税する方針だが、与党大綱は開始時期の決定を見送った。安全保障環境が厳しくなり、防衛への関心が高まる一方で、財源の裏付けがないまま予算規模ばかりが先走る状況が続く。
 高校生年代(16~18歳)の子どもがいる世帯の扶養控除は縮小する。児童手当の拡充で全所得層で手取りは増えるとされるが、影響を検討するとして最終決定は先送りした。控除縮小には反発がある。慎重を期すのは当然とはいえ、曖昧な決着は政策の必要性にも関わってくる。
 こうした対応には、増税批判をかわしたい首相の意向や、裏金疑惑による政局混乱の影響が見て取れる。定額減税の所得制限も、国会議員は歳費などの合計が2千万円を超えるため、自らを対象外とすることで批判を弱めたい思惑が指摘される。
 政治不信が続くようでは施策の信頼は高まらない。裏金問題の全容解明と政治資金の透明化は不可欠だ。しかし、例えば国会議員の特権である調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)にも厳しい視線が向けられるが、国会の改革への動きは鈍い。野党も含めて真剣に向き合わなければならない。

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