2023.12.14 08:00
【臨時国会閉幕】政治不信深めた責任重い
臨時国会がきのう閉幕した。自民党の政治資金パーティー問題が政権中枢を直撃する中、岸田内閣に対する不信任案は与党の反対で否決された。言うまでもなく、これで幕引きとはならない。
安倍派(清和政策研究会)の裏金疑惑は、最近5年間で5億円に上る可能性が浮上している。苦境に立つ首相は、人事で刷新感を出し政治不信を乗り越えるつもりのようだ。
首相は松野博一官房長官ら安倍派の4閣僚を事実上更迭する方向で調整している。党の政策責任者である萩生田光一政調会長らは辞表提出の意向を固めたとされる。
しかし、こうした対応に安倍派の反発は強く、首相が思い描いたらしい政務三役15人の一掃はかないそうにない。党内第4派閥を率いてきた首相にとって、安倍派優遇の政権運営から脱却を意図しても、今後をにらめば簡単には踏み切れない。
さらに、首相の出身派閥の岸田派(宏池会)にも政治資金収支報告書の過少記載の疑いが発覚した。適切に対応するよう指示するのは当然だが、修正すれば済むということではない。政治資金の透明性を高める対策をとらなければ抜け穴探しが繰り返されてしまう。
人事を巡っては、今国会会期中に首相は、過去の税金滞納で財務副大臣を事実上更迭した。9月の内閣改造後、政務三役の辞任は3人目だった。任命責任は重い。
首相の腰が定まらないのは不祥事対応だけではない。今国会の焦点となった物価高に対応する経済対策では、首相主導で所得税と住民税の減税を打ち出した。だが、来年6月からの実施のため目的や即効性に疑問が向けられた。
また、防衛費増額の安定財源を確保する増税時期は曖昧なままで、減税後の増税がかえって意識される結果となった。減税を掲げて衆院解散に打って出るとの観測もあったものの、方向性が定まらないことが嫌気されて支持率は上がらず、見送らざるを得なかった。
補正予算は歳入の7割近くを国債発行で賄う。財政運営は厳しさを増している。新型コロナウイルス対応で膨らんだ支出を平時に戻す姿勢は後退している。財政規律の緩みを軽視してはならない。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向けた特例法が成立した。被害補償の原資となる財産の隠匿・散逸を防ぐことを狙う。ただ、包括的な財産保全策の導入は見送られ、実効性が課題と指摘される。検討を重ねる必要がある。
旧統一教会と政治との関係の解明は積み残っている。教団との関係を絶つにはまず全容を明らかにして、首相が繰り返す丁寧な説明を行うことが求められる。