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2023.12.12 08:00

【安倍派裏金疑惑】解明と説明責任を果たせ

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 小手先の対応で乗り切ろうとしては政治不信を高めるだけだ。徹底調査で真相を明らかにし、説明責任を果たす必要がある。「政治とカネ」問題の再発防止へ実効性のある制度を構築することが求められる。
 自民党派閥の政治資金パーティー券問題は、党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)の裏金疑惑が拡大している。販売ノルマを超えた売り上げからキックバック(還流)を受けたとされる幹部らの名前が相次いで浮上した。
 安倍派では2022年までの5年間で1億円超が裏金となり、少なくとも10人以上がキックバックを受けていた疑惑がある。松野博一官房長官、高木毅国対委員長ら実力者が政治資金収支報告書に記載しない裏金化を指摘される。ほかにも複数の議員に数千万円が還流した疑いがあり、派閥全体では数億円規模に上る可能性が出ている。
 岸田文雄首相を支える党の幹部や重要閣僚を務める安倍派幹部に向けられる疑念が、政権を揺さぶる。党内第4派閥の首相にとって、政権運営や来年の党総裁選をにらんだ安倍派優遇が裏目に出た格好だ。
 臨時国会はあす会期末を迎える。東京地検特捜部は国会閉会後、政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)容疑で捜査を本格化させる。還流の仕組みを把握していたとみて、歴代事務総長への任意の事情聴取を検討しているようだ。
 松野氏は派閥の実務を取り仕切る事務総長を21年10月まで約2年間務めた。最近5年間で計1千万円超の資金還流を受けながら、収支報告書に記載しなかったとされる。
 岸田首相は、松野氏を事実上更迭する方向で検討している。内閣の要である官房長官が「お答えを差し控える」「適切に対応したい」と、事実関係の説明を避けている状況だ。これでは疑惑と向き合う政権の姿勢を疑われても仕方ない。
 政権内では、内閣改造・党役員人事を年内に実施する案が浮上している。安倍派の政務三役在任ゼロもとりざたされる。更迭の印象をぼかし、人事で体制を立て直したいのだろう。だが、追及を避けたい思惑が透けるようなら低迷する内閣支持率はさらに打撃を受けよう。
 規正法は政治団体の会計責任者に収支報告書の提出義務を課している。特捜部は、清和会の会計責任者ら事務方の聴取を進めている。還流の仕組みを確認して、立件の可否を判断するとみられる。議員が還流の詳細を把握していれば共謀したとして罪に問われる可能性がある。
 他派閥でも収支報告書への過少記載は常態化が疑われ、収支の状況を表面化させない手法も行われているとされる。規正法の趣旨は生かされていない。
 収支報告書に記載していれば問題がないものを、あえて記載しないのはなぜか。なぜ断ち切れないのか。率直な疑問が常に政治とカネ問題につきまとう。しかし政治は真剣に向き合わず信頼を損なってきた。不信の増幅を止めなければならない。

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