2023.12.06 08:00
小社会 青春に悔いなし
反戦に身を投じた夫とそれを支えた原さん演じる妻。若い2人は運動が10年先に評価されると信じ、「顧みて悔いのない生活」を誓う。男は獄死し、妻も非国民として村八分にされるが、恥じることなく生き抜く。やがて終戦を迎え妻は一転、農村のリーダーになっていく。
戦時中は軍国主義の片棒を担いだ映画・言論界の猛省も見て取れる作品だ。原さんも以後「民主主義の女神の名をほしいままにした」という(四方田犬彦著「日本映画史100年」)。
国も時代も背景も異なるが数年前、民主化運動に立つ香港の若者の姿に、この映画を思い出した。香港当局の徹底的な弾圧によって、運動もいまではすっかり息を潜めた感があるが。
リーダーの1人で、日本でも知名度が高い「民主の女神」こと周庭さんの近況が明らかになった。カナダに留学中という。香港では逮捕され服役。出所後も公の場に姿を見せず、心配されていた。やはり当局から相当な精神的圧力を受けてきたようだ。
その苦痛からか香港には「戻らない」としつつ、民主化には関わっていく姿勢を見せている。悔いのない青春を自問し続けているのだろう。いつか胸を張って故郷に戻れる日が来ることを願ってやまない。