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2023.12.05 08:00

小社会 ミュージカル空海

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 内なる祈りは躍動がもたらす。高知県のダンサーらによって今秋上演されたミュージカル劇「空海~HERO~」は見る人の心にさまざまな直感、感慨を描いた。

 総勢120人によるスペクタクルショー。空海の瞑想(めいそう)、中国への旅、真言密教の獲得、日本の寺社建立へ至る、波乱の足跡を描く。脚本と監督は高知のジャズダンススタジオで働く59歳の松岡春和さん。元大手電器メーカーの開発職で、仕事を辞めインドで僧侶修行も重ね、儀式の教えを受けた筋金入り。

 劇の主人公は休学中の高校生。時空を飛び、空海の生涯へ紛れ込む。少年を通して偉人・空海を探る、チャレンジングな試みだ。

 ハイライトの一つは2幕目の入り、真言密教の教えを獲得するシーンだろう。演者はよさこい祭りのストリートに育ったダンサー7人。真言宗の本物の僧侶たちが唱える理趣経(りしゅきょう)の響く中、一人一人順々に勝負するごとく、瞬時に全身をくねらせ回転させ、姿形をしなやかに変幻させる。山田太鼓と、お経の大音声(だいおんじょう)を背景音楽とする即興のダンスは、この世界を吸い込んでいくかのような迫力だ。

 空海の人生とは、身体性に満ち、ミュージカルそのものだ。獲得した信仰の姿は、自由な肉体表現の先にあり、根源は明るく、陽性のものかもしれない。

 真言密教の開宗から1200年。ラストで静かに手を合わせる少年の姿に、祈りとは何かを考えさせられた傑作ショーだった。再演希望。

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