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2023.12.05 08:00

【核兵器禁止会議】保有国をどう取り込むか

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 核兵器禁止条約の第2回締約国会議は、禁止と廃絶への決意を新たに示した政治宣言を採択して閉幕した。核保有国に加え、米国の「核の傘」に依存する日本は、昨年の前回会議に続いてオブザーバーでの参加も見送った。
 多くの加盟国が核の非人道性を確認し合い、世界に発信することはむろん、大きな意義がある。だが、安全保障環境が緊迫の度を増す中で、抑止力論が幅を利かせてもいる。保有国などをどう、核廃絶に向けた流れに取り込んでいくか。現実的な課題も浮き彫りになった会議だったといえる。
 会議は逆風の中で開催された。ウクライナに侵攻するロシアは、核兵器の使用をちらつかせ、ウクライナを支援する欧米を威嚇。パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと戦闘中のイスラエルは、事実上の核保有国でもある。
 保有国の相互不信は高まり、核軍縮の機運にも水を差している。昨年8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は最終文書を採択できずに決裂。機能不全に陥ったままだ。ロシアは米国との新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止。中国も不透明な形で核兵器の増強を続け、核リスクは悪化の一途をたどっている。
 締約国会議が採択した政治宣言は、危うい現状に対して強い危機感を示した。核の威嚇に基づいた「抑止論」への固執や正当化は「偽りの信頼感を与える」と指摘した上で、「核軍縮の進展を阻害している」と断じた。その通りだろう。
 米国が北大西洋条約機構(NATO)加盟国に核兵器を配備する「核共有政策」に対抗して、ロシアは隣国の同盟国ベラルーシに配備した。核抑止論が軍縮に逆行しうる典型的な事例にほかならない。政治宣言が指摘する通り、抑止論を脱却することなしに、核兵器なき世界は実現できまい。
 会議にオブザーバー参加したNATO加盟国のドイツは「安全な世界を実現する思いは共有する」としたものの、ロシアの動向を挙げて条約への加盟を否定した。今回、核廃絶への具体的な動きや道筋を示せなかったことは確かだが、こうした対話の機会を重ねることは重要だ。
 前回会合では、核保有国などの軍縮の不十分さを指摘しつつも、行動計画で禁止条約とNPTとは「補完し合う関係」と強調。保有国側との対立解消を図る方針を明記している。核の傘に依存する国々を巻き込みながら、保有国との対話へと発展させる道筋を探りたい。
 同じく米国の核の傘に依存する日本だが、ドイツなどとは対応が分かれた。NPT体制を維持、強化して現実的に核軍縮に取り組むとの立場だからだ。
 保有国と非保有国の「橋渡し役」を掲げてきたが、禁止条約締約国の動きに背を向けたままでは担うことはできない。唯一の戦争被爆国としてパフォーマンスではない、具体的な行動が求められる。

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