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2023.12.03 08:00

【台湾総統選】中国とどう向き合うか

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 来年1月に行われる台湾総統選の構図が確定した。「台湾有事」の可能性が指摘される中、選挙結果は東アジア情勢や米中関係の行方にも大きく関わる。中国とどう向き合うか。論戦で掘り下げ、戦略や政策の精度を高めてもらいたい。
 総統選には3人が立候補を届け出た。与党の民主進歩党(民進党)からは蔡英文総統の後継を目指す頼清徳副総統が立ち、最大野党の国民党からは侯友宜氏が、台湾民衆党からは柯文哲氏が名乗りを上げた。
 中国が、台湾の武力統一の可能性を否定せず軍事的威嚇を強める中、台湾の有権者の多くは、実質的に独立状態である現状の維持を望んでいる。このため「台湾独立」や「中国との統一」を掲げる党はなく、平和的に現状維持するための手法、考え方が最大争点となっている。
 「一つの中国」原則を認めていない民進党は、台湾独立志向があると中国からみなされ、対話・交流が行われていない。野党側は、2期8年続いた民進党政権で台湾海峡の安全保障環境が悪化したと批判し、「平和か戦争かの選択」(国民党)などと迫っている。
 民進党政権が続けば中国が姿勢を硬化させる恐れはあるが、国民党政権で対話が再開されても、香港の「一国二制度」を形骸化させたような強硬措置に出ないとも限らない。そのような可能性も念頭に各候補の政策と資質を踏まえ、有権者が新総統を選ぶことになる。
 選挙に当たり野党側には曲折があった。世論調査で頼氏が一貫してリードしているため、国民、民衆両党は候補一本化で一度は合意した。しかし、民衆党は既成政党を嫌う若者たちの受け皿として4年前にできた経緯があり、互いに譲らず、共闘は破綻した。もともと難しいとみられており、やはり無理があった。
 このため、選挙は頼氏有利の構図で進む。しかし、経済政策や汚職問題による有権者の不満は与党に向かい、世論調査では6割超が政権交代を望んでいる。対中関係は大きなテーマであるものの、「現状維持」を目指す与野党の方針に大差がないとして、別の要素が争点化する可能性があり、情勢は予断を許さない。
 民進党政権の継続を望まない中国が直接的、間接的に干渉してくることも考えられ、実際、野党連合の動きに関与したとの臆測もある。
 台湾で、総統の直接選挙が初めて実現したのは1996年。他国に統治されていた時期が長かった歴史もあって有権者の政治的関心は高く、政権交代が3回起こるなど民主主義が機能してきた。台湾の選択に、中国の関与はあってはならない。米国も先の首脳会談で、中国に介入しないよう警告した。
 日台に関しては、総統が誰になろうと、民主主義と自由の価値観を共有するパートナーとして基本的な関係が変わることは考えにくいが、中台関係の緊張は安全保障環境の変化に直結する。総統選の行方を注視し、選挙後を想定したシミュレーションを重ねていく必要がある。

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