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2023.12.02 08:00

【日大の薬物事件】代償はあまりに大きい

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 なぜこれほど法令順守や危機管理の意識が欠如しているのか。その原因を究明し、改善を図らなければ、「処分」だけでは日本大学の信頼回復はないだろう。
 アメリカンフットボール部の薬物事件とその対応を巡り、日大が上層部の処分を決めた。酒井健夫学長と沢田康広副学長は辞任し、林真理子理事長は減給50%・6カ月とする。アメフト部は廃部方針が示されているが、見直しを求める声もある。
 責任者の処分は当然といえるが、80年以上の長い歴史と、何度も大学王者に輝いてきた実績のあるアメフト部の廃部となると、極めて重い判断になる。
 アメフト部は2018年に「悪質タックル」が社会問題化。厳しい批判を受け、指導体制を一新して再出発を図った。
 ところが、ことし8月以降、大麻所持などの疑いで部員の逮捕が相次いでいる。容疑が事実なら、再起を図る部内でなぜ違法薬物が広がったのか。その解明が欠かせない。
 当然、部の指導陣や大学の責任は重い。監督責任はもちろんのこと、部員の大麻使用の情報を得た指導陣や大学幹部の対応はあまりに無責任だった。
 第三者委員会の報告書によると、指導陣らは昨年の段階で情報を把握し、部員から自己申告もあったが、十分な調査をせず矮小(わいしょう)化した。ことし7月には、沢田副学長が寮で大麻のような不審物を発見したものの、警視庁に報告するまで「空白の12日間」があったという。
 隠蔽(いんぺい)体質と取られても仕方がないだろう。林理事長も十分な対応をせず、報告書は組織の法令順守意識の欠如やガバナンス(組織統治)の機能不全を厳しく指摘した。
 日大は、ワンマン体制を敷いた田中英寿元理事長による背任や脱税の不祥事に揺れ、昨年6月、日大出身で作家の林氏が新理事長に就任した。新体制でガバナンスの見直しを進めてきたはずだ。
 しかし、依然として風通しが悪い組織のままではないのか。アメフト部の薬物事件を巡っては、理事会内で林理事長と沢田副学長の対立が激化し、混乱。世間からの批判が一段と増している。
 こうした混乱が結果的にアメフト部を見る目も厳しくした印象が拭えない。部の指導陣や大学側がもっと適切な対応を取っていれば、廃部の危機という事態にまではならなかったのではないか。
 日大アメフト部はアメフト界の名門であり、「フェニックス(不死鳥)」の愛称でも知られた。競技や練習に真摯(しんし)に取り組んできた部員が多かったはずだ。入学・入部しようと考えていた高校生もいるだろう。代償はあまりに大きい。
 アメフト部にとどまらない。不祥事が相次ぐ日大は3年連続で国からの私学助成金の全額不交付が決まっている。国の対応には賛否があるが、大学側は早急に信頼を取り戻さないと、教育研究全般に影響しかねない。

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