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2023.12.02 08:00

小社会 暗躍者

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 毎年12月はノーベル賞の授賞式が開催される。ちょうど50年前、1973年に平和賞を授与されたのが、訃報が伝わった米国の元国務長官ヘンリー・キッシンジャーさんだった。

 授賞理由はベトナム戦争の和平交渉の実現。泥沼化していたベトナム戦争を終結に導いたのだから、外交手腕の高さはずばぬけていたのだろう。米中の国交正常化にも貢献し、一目置かれた。

 もっともその活躍は「暗躍」に近かったのかもしれない。現実主義であると同時に秘密主義の顔も持っていた。ベトナム和平を巡っては官僚に情報を渡さなかった。中国や旧ソ連の人権侵害の黙認でも非難された。米中国交正常化では、日本の悪口で中国側と意気投合して、距離を縮めたという。

 暗躍といえば、これも外せない。米国が核兵器のない沖縄返還を認めた69年の日米首脳会談。裏では、有事に米国の核の再持ち込みを日本側が認める密約が交わされていた。筋書きを描いた1人がキッシンジャーさんだった。

 時の日本政府は佐藤栄作首相。核を「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を提唱しつつ、国民を欺いていたことになる。しかも佐藤氏は74年、ノーベル平和賞を受けている。

 キッシンジャーさんの言葉に「チャンスは貯金できない」がある。好機とみれば、多少の弊害は目をつぶり、突き進む。希代の外交家が国際政治史に残した数々の足跡は、そんな見方もできる。

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