2023.11.30 05:00
【COP28】温暖化対策の正念場だ
地球温暖化の現実は厳しい。今年も各地で熱波による大規模な山火事のほか、洪水被害が相次いだ。世界の平均気温は1940年からの観測史上、最高となることが確実視される。気温上昇に歯止めがかからない中、科学が予測する「未来像」も切迫度を増している。
条約事務局が公表した報告書によると、各国による温室効果ガス削減の最新目標が達成された場合、世界全体の排出量は2020年代に減少に転じる可能性は高い。それでも、今世紀末には2・1~2・8度上がるとみられる。
15年採択のパリ協定が目指す、産業革命前と比べて2度未満、できれば1・5度に抑えるという目標には遠く及ばないということだ。時間的な制約の中で「世界は気候危機への対処に失敗しつつある」(国連のグテレス事務総長)との見方も大げさではあるまい。
ただ、こうした状況も全く想定されていなかったわけではない。パリ協定は全ての国が参加する画期的な枠組みであるだけに、合意には経済発展など各国の事情に配慮する必要があり、自主的に削減目標を掲げる仕組みとなったからだ。
対策が不足する懸念に備え、協定に組み込まれたのが「グローバルストックテイク」と呼ばれる進捗評価の仕組みだ。科学的に気温抑制に必要となる削減水準と比べ、実際の対策を定期的に点検する。現状は確かに危機的だが、これからが正念場といってよい。
課題は多い。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「1・5度目標」の達成に二酸化炭素の排出量を19年比で30年に半減、35年には65%減とする必要があるとする。現状の取り組みから、この水準への上積みが求められる。
途上国への支援の在り方も鍵を握る。昨年のCOP27では、気候変動で既に生じた「損失と被害」を支援する基金の設立で合意。今回は基金運用の具体的な仕組みがテーマとなる。これまでの協議では、先進国と途上国の立場の違いが浮き彫りになる場面が見られた。途上国の対策を加速させる視点が欠かせない。
議長国であるUAEは対策の加速に向け、COP28で締約国全体での合意に加え、有志国による枠組みを重視。世界全体の再生可能エネルギー容量を30年までに3倍へ引き上げる誓約のとりまとめを目指す。フランスと米国が主導して石炭火力発電を禁止する動きもある。
岸田文雄首相は首脳級会合に出席する予定だが、いずれの分野でも政府に積極的な姿勢はみられない。これらの枠組みにどこまで踏み込んでいけるか。原発に固執した脱炭素政策だけでは、世界の潮流に取り残されかねない。