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2023.11.28 08:00

【高知市長交代】県都の潜在力を引き出せ

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 県都の「顔」が20年ぶりに交代する。6選を目指した現職の岡﨑誠也氏と、元自民党県議で新人の桑名龍吾氏が一騎打ちを繰り広げた高知市長選は桑名氏に軍配が上がった。わずか2千票差の激戦だった。
 経験に長じた現職の行政手腕は安定感があり、計算できる一方で、多選の弊害が指摘され、新味も期待しにくい。岡﨑市政の継続かどうかが最大の争点となった中、高知市民はトップの交代を選択した。
 現職を破った桑名氏だが、岡﨑市政の実績は評価し、「継承すべきは継承する」との姿勢のようだ。岡﨑氏では引き出せなかった県都のポテンシャル(潜在力)を、新たな視点と手法で引き出してもらいたい。人口減少が深刻化する高知県をけん引するような市政運営を期待する。
 岡﨑市政は、本紙の満足度調査で6割超が評価するなど市民から一定支持されていたのは確かだ。多選批判についても岡﨑氏は「市民が判断するものだ」とかわしていた。
 しかし、とりわけ4期目以降は市役所組織の緩みや施策の実行力に疑問符がつく場面が散見され、力を入れた「高知市型共生社会」の取り組みも浸透しているとは言えなかった。トップが意識しようがしまいが長期政権で組織はマンネリ化する。桑名氏は、その閉塞(へいそく)感の打破へリーダー交代の必要性を訴えた。
 選挙戦は、自民党籍を持ったままの桑名氏を巡って国政与野各党の動きが強まり、政党対決色が強い展開となった。市民の分断をあおる危惧があったにもかかわらず、浜田省司知事も桑名氏支援を鮮明にした。
 「国政との向き合い方」は確かに首長選挙の一つの焦点ではあるだろう。だが、そもそも地方自治は二元代表制の下で一党に偏らない行政運営が基本となる中、陣営側が殊更に争点化しようとした感は否めない。市民が求めたのは、コミュニティーの希薄化や高齢化など独自の都市問題を抱える高知市の具体的な将来像ではなかったか。
 桑名氏は「一党一派にこだわらない」と掲げるが、自民、公明両党の組織力なしに当選はなかった。市民を二分したしこりの解消も含めて対応が注目される。
 桑名氏が繰り返した「県市連携」「県市一体」の訴えもわかりにくさがあった。
 県民の大半は、いまや県市の溝はないという認識ではないか。高知市は、県と遜色ない権限を持つ中核市でもある。県市連携は当然の土台として、基礎自治体の機動力を生かし県勢をリードするような独自の動きがあってしかるべきだ。求められているのは市の主体性である。
 県内最大で唯一の「都市」である高知市も人口減と高齢化に悩み、財政はまた悪化局面にある。公約実現へ桑名氏は「新しい視点」「柔軟な発想」を訴える。手腕が試される。
 激戦模様だったにもかかわらず、投票率は40・34%と伸び悩んだ。市議選も含めて同市の低投票率傾向は顕著だ。抜本的な対応を考える段階に来ている。

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