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2023.11.24 08:00

【万博費用の膨張】意義に見合う負担なのか

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 2025年春に開幕する大阪・関西万博の会場整備費が、大幅に上振れする見通しとなった。
 開催に確固たる意義を見いだせないとの指摘もある中、なし崩し的に国民負担が膨らめば、不要論が強まるのは当然だ。主催者の対応の甘さや準備不足も否定できず、それが万博の存在価値を下げる悪循環を招いているようにも映る。
 国民の不信感の払拭が欠かせない。費用圧縮に向けた柔軟な対応を検討するとともに、情報公開を徹底し、説明を尽くす必要がある。
 万博の会場整備費は、20年時点の見積額1850億円から2350億円に膨らんだ。18年時点の当初見積額は1250億円で、2度目の増額となった。費用は国と大阪府・市、経済界で3等分するため、国民負担が増す。
 実施主体の日本国際博覧会協会は資材価格や人件費の高騰が原因だとする。確かにやむを得ない面はあるだろう。だが、当初想定の1・9倍にまで膨らんだ上昇幅や、「想定外」とする協会の釈明を、国民が素直に受け入れられるだろうか。共同通信の世論調査では、75%が費用上振れを「納得できない」とした。
 政府はほかに、チケット代などの収益で賄う計画だった警備費200億円程度を負担する方針だ。これも増額となる。会場整備費とともに金額の精査が欠かせない。
 万博を巡っては、「目玉」とされる海外パビリオンの建設遅れも課題となっている。
 万博には150超の国・地域が参加を表明。うち56が自前で建設する予定だったが、難易度の高い工事や建設業界の人手不足により、建設業者との交渉が難航。協会は今年8月になってようやく、発注業務の代行や建設業者の支援など対策を講じた。
 パビリオンを簡素化する国も増えているようだが、メキシコとエストニアは国内の財政事情を理由に撤退を決めた。それに続く「撤退ドミノ」も懸念されている。
 この課題も建設業界側が早くから指摘していた。協会の対応が鈍かったと言われても仕方あるまい。
 不安材料が次々と報じられる中、共同通信が今月行った世論調査で、万博が「不要だ」が68%に達した。状況は深刻と言わざるを得ない。
 懸念するのは、万博のプラスの側面までが軽視されてしまうことだ。確かに以前のような求心力はないものの、世界の英知を集めて地球規模の課題に向き合う場としての意義がなくなったわけではない。万博が今回掲げる「いのち輝く未来社会のデザイン」も重要なテーマだ。
 開催する以上はその意義と成果を最大化することが求められるが、主催者の手腕を疑わざるを得ないような事態が相次ぐ。協会は国、自治体、企業の出向者でつくる「寄り合い所帯」であり、当事者意識を欠くような風土があるのではないか。
 パビリオンの工事など今後もさまざまな課題が控える。プロジェクトの執行管理体制を引き締め直さなければ、また迷走しかねない。

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