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2023.11.20 08:00

【旧文通費の改革】世論の忘却を待つのか

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 国会議員の特権と国民感覚とのずれが批判される「宿題」がうやむやにされたままである。国民世論が忘れるのを待っているとすれば、繰り返し指摘しなければなるまい。
 国会議員に月額100万円が支給されている「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)の改革が政治課題に浮上して2年が過ぎた。
 見直し論議のきっかけは、一昨年10月31日投開票の衆院選までさかのぼる。初当選した野党の新人議員が、在職1日の当選者に10月分100万円が満額支給されるのはおかしいと提起した。
 各党は半年後、ようやく日割り支給への変更と名称変更に関する法改正に至った。ただ、この際に「公の書類発送、通信のため」だった支給目的を「調査研究、広報、国民との交流、滞在など」に広げている。
 議員に都合の良い露骨な「お手盛り」の見直しと言わざるを得ない。多くの地方議会が政務活動費について取り組んでいる使い道の公開や、未使用分の返納といった本質的な改革は手つかずのままだ。
 改革には、自民党を中心に「実質的な収入減少につながる」として消極論が根強いとされる。
 議員歳費とは別の「第2の給与」と呼ばれる旧文通費は領収書も返還も必要ないため、事務所費や秘書給与のほか、自民党若手議員からは「子どもの教育費などに充てている」という証言も出ている。チェックができないブラックボックスのような「政治とカネ」の仕組みでは、国民の理解は得られまい。
 ことし6月までの通常国会でも自民党が慎重姿勢を崩さず、見直しは先送りされた。いまの臨時国会では改革論議の報道さえ伝わってこない。国会の不誠実というほかない。
 物価高に賃上げが追い付かず、国民の生活の厳しさと不安は深刻の度を増す。「なぜ国会議員だけが」という議員特権や、政治とカネへの国民の視線はより厳しさを増していると自覚すべきだろう。
 この臨時国会では、岸田文雄首相や閣僚らの年収が増える国家公務員特別職の給与法改正案が政府から提出された。議論は注目を浴び、先日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。
 野党側は「賃上げが追い付かず、社会保険料も上がる中、国民を差し置いて首相が給与を上げることに理解は得られない」と批判。与党からも引き上げ凍結論が出て、首相や政務三役が増額分を自主返納する対応で火消しを図っている。
 中央省庁で働く職員ら一般職の給与引き上げに準じた措置ではある。しかし、物価高のみならず政務三役の不祥事が重なり政治不信が高まる中では、あまりにも国民感情への感度が鈍いように映る。
 世論調査で岸田内閣の支持率が過去最低水準に落ち込む一因には、首相の指導力がないとの不満も挙がっている。「信頼と共感の政治」を言うのであれば、政治とカネの分野でも国民の視線に対する感度を高め、指導力を示すべきである。

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