2023.11.19 05:00
【大谷選手MVP】際立つひたむきな努力
終盤の約1カ月間は右肘のけがで戦線離脱を余儀なくされたが、2年連続で「2桁勝利、2桁本塁打」という前人未到の記録を達成。これもひたむきな姿勢があってこそで、文句なしの受賞だろう。不断の努力をたたえたい。
6シーズン目となった今季も、大谷選手はさらなる進化を見せた。6月30日には今季メジャー最長となる飛距離約150メートルの一発でパワーを見せつけた。7月27日のダブルヘッダーでは1試合目で初完封を飾り、2試合目では2打席連続本塁打を放っている。
打者ではトップの44本塁打に、リーグ4位の打率3割4厘、95打点を記録。投手でも10勝5敗、防御率3・14、167奪三振と圧倒的なパフォーマンスだった。初めてMVPに選ばれた21年の成績と比べても、二刀流の完成度を一層高めたといえるだろう。
その魅力は成績だけにとどまらない。レギュラーシーズン前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、プレーで強力にチームをけん引したほか、スターが居並ぶ米国との決勝戦を前に、円陣で「憧れるのをやめましょう。やっぱり憧れてしまっては超えられない」と仲間を鼓舞。リーダーシップを見せつけた。
これだけの活躍を支えているのは、たゆまぬ努力にほかならない。広く知られる食生活や睡眠などへのこだわりに加え、科学的な根拠に基づいた練習にも意欲的だ。
WBCの侍ジャパンでも、1球ごとにスイングの数値を要求し、打席での調整に役立てていたという。データの担当者も「目標とする数字やイメージが明確」だったと振り返っている。そうした野球に対するひたむきな姿勢が野球ファンだけでなく、多くの人を魅了しているに違いない。
ただ、WBCから休む間もなく、投打にわたって全力プレーを続けた疲労やダメージは、自覚をも超えていたのだろう。
9月には2度目となる右肘の手術を受けたが、大谷選手本人も「(18年の)1回目よりもスムーズに来ている感覚はある」と話している。執刀医によると、来季は開幕から打者に専念し、投手としての復帰は25年になる見通しだという。
注目は来季、どんな色のユニホームを着ているかだろう。渡米以降、所属したエンゼルスからフリーエージェントとなり、激しい争奪戦が繰り広げられている。
大谷選手はエンゼルスへの愛着を語る一方で、ポストシーズンが行われる9月に「ヒリヒリ」した雰囲気の中でプレーすることを望んできた。早期の回復とともに、より充実した環境での活躍を期待したい。