2023.11.19 08:00
小社会 ユニコーン
もちろん、取引された多くはクジラの仲間イッカクの角(実際は牙)だったらしい。ともあれ、中世の教皇は「疫病から身を守るため金貨1万2千枚を払って角を手に入れた」、フランス宮廷の食卓では「食物中の毒の検証に使われた」と手元の百科事典にある。
米大リーグの大谷翔平選手が、2度目のアメリカン・リーグ最優秀選手に輝いた。米国内の「ユニコーンは実在した」という賛辞が伝わる。この場合は唯一無二、ずばぬけた能力を持つ非凡の象徴といった意味だとか。
今季は日本にいるファンも唯一無二を再認識した。春のワールド・ベースボール・クラシック。劣勢の準決勝では二塁打を放ち、塁上で「魂の咆哮(ほうこう)」。スターが並ぶ米国との決勝の前、仲間を鼓舞した「憧れるのをやめましょう」は新語・流行語大賞の候補になっている。
打っては本塁打王、投げては10勝ならば文句なしの満票受賞だっただろう。先日は、国内の全小学校に計約6万個のグラブを贈ると報じられた。「野球しようぜ!」。伝説の域に達したスケール感はここにもある。
右肘の手術で来季は打者に専念する。だが、ユニコーンのことだ。自ら「解毒」して二刀流を進化させるに違いない。