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2023.11.18 08:00

【日中首脳会談】意思疎通の重要性が増す

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 戦略的互恵関係を包括的に推進すると、直接対話で再確認したのは成果ではある。だが、対立を解消するのは困難が伴う。立場の違いを適切に処理できるように対話を重ねることが重要となる。
 岸田文雄首相は中国の習近平国家主席と約1年ぶりに会談した。今後とも首脳同士で緊密な会談、意思疎通を図ることで一致した。
 覇権主義的な動きを強める中国は、日本周辺で軍事活動を活発化させている。沖縄県・尖閣諸島周辺では中国海警局の船による領海侵入を繰り返す。東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に反発して日本産水産物の輸入を全面停止した。邦人の拘束も相次ぐ。
 冷え込んだ日中関係の改善は急務となっている。絶対的な権力を握る習氏との対面交渉の持つ意味合いは大きい。そうした場面を多く設定することが、建設的かつ安定的な関係へとつながるはずだ。
 支持率が低迷する首相は、外交での成果のアピールを狙う。経済の減速が鮮明になっている中国は、日本との経済関係は無視できない。日中は、9月に岸田氏と李強首相がインドネシアで立ち話をしたほか、10月には日中平和友好条約発効45年のメッセージを交換するなど、首脳会談に向けて調整してきた。
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた会談であり、懸案解決へ大きな進展を期待するよりも、対立を顕在化させたくなかったのが本音だろう。
 9月の中国向け水産物輸出は前年同月比9割減となっている。首相は規制の即時撤廃を求めた。協議と対話を通じて解決方法を見いだす方針で一致したのは前進だが、鍵は具体的な行動に移せるかどうかだ。
 中国は処理水への非難に各国を巻き込み、外交カードとしたい思惑が指摘された。関係を強めるロシアが10月に水産物の輸入制限に踏み切った。中国の影響下にある一部島しょ国も放出に異議をとなえているが、広がりは限定的ではある。ただ、中国は11月にはニシキゴイの輸入を事実上制限し、圧力を強めている。
 経済が低迷する中国は、政権批判が強まらないように日本に妥協しない姿勢を示しているとの見方がある。日本は撤回へ世界貿易機関(WTO)に提訴に踏み切る可能性もある。中国の軟化へ向けた説得は簡単ではないが、解決へ粘り強く取り組むしかない。
 中国の経済的威圧は、産業に必要な重要鉱物にも及んでいる。中国への依存を低減するため、各国は信頼できる供給網を構築する動きを強めている。中国は包囲網と受け止めて反発するが、貿易を通じて他国を威圧する対応が招いた結果であり、まずはその姿勢を改めることだ。
 台湾海峡の平和と安定は国際社会にとって重要だ。先の米中首脳会談では、国防当局や軍高官の対話再開で合意したが、中国は台湾問題で譲歩しない立場を鮮明にしている。緊張緩和には対話が不可欠で、日本も積極的に関与する必要がある。

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