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2023.11.11 08:00

小社会 税金滞納

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 税金の取り立ても、最後は情と情のぶつかり合いらしい。「鬼平犯科帳」でおなじみの池波正太郎さんは専業の作家になる前、東京の都税事務所員だった。「厭(いや)な仕事」であったが「忘れ難い思い出」と記している(随筆「税金とネエブル」)。

 事業税や固定資産税を滞納している町の店をよく回った。何度も足を運ぶうちに先方も気の毒がって懸命になり、分割ながら納税してくれた。完納すると双方、肩の荷が下りる。一緒に喜びを分かち合いたくなる瞬間だったに違いない。

 退職後、かつて「滞納票」が10枚もたまっていた八百屋の前を通りがかった。いまでは商売も少し上向いて、滞納票は1枚と店の人から聞いた。元気をもらって帰宅した池波さんは妻に確かめた。うちはちゃんと固定資産税を納めているよな、と。

 「ええと―三枚ばかり滞(たま)ってるかナ」。妻の返答に目を丸くしたという落ちである。納税は国民の義務。だからこそ皆苦しくても従う。気持ちよく納税したい。ところがとんだ政治家がいたものだ。

 神田憲次財務副大臣が経営する会社が固定資産税を滞納。督促も無視していたのか4回も差し押さえを受けていた。国税の元締の大幹部であり国会議員だ。税理士の資格も持つというから全く示しがつかない。

 同情の余地がない「事件」。庶民感情を思う火付盗賊改方長官の鬼平なら、所管は違うが憤慨しただろう。現代の納税者も怒り心頭である。

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