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高知新聞PLUSの活用法

2023.11.07 08:23

良質なネット空間目指して 本社など31社「配信元」表示を模索

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 高知新聞社は10月、安全なインターネット環境に向けた仕組み作りを目的とする非営利共益法人「オリジネーター・プロファイル(OP)技術研究組合」に加入しました。ニュースや情報の真偽を分かりやすくし、記事や広告の信頼性をどう高めていくのか―。さまざまなメディアがスクラムを組み、より良質なネット空間を目指す動きを紹介します。

 私たちがパソコンやスマートフォンで日々閲覧している情報の中には、フェイクニュースや詐欺広告といった危うい情報も少なくありません。近年の生成AI(人工知能)の急速な普及に伴い、そのリスクは一層高まっていると言えます。

 加えて昨今はX(旧ツイッター)、インスタグラムなど交流サイト(SNS)が大きな影響力を持ち、拡散していく中で真偽不明になる情報もあります。

 しかし、まっとうな記事や広告なら、最初に配信した報道機関や広告主・広告会社が必ず存在します。同組合はそれらの機関を「オリジネーター」と定義し、ブラウザー(閲覧ソフト)の画面上で、配信元の情報を表示できる仕組みを構築しようとしています。

 具体的には、流通過程で改変されないようデジタル化した識別子を発行。それを記事や広告に埋め込むことにより、他のメディアに配信したりSNSで拡散されたりしても、クリック一つで配信元の名称やロゴ、高知新聞社なら日本新聞協会に属していることなど、実在性や信頼性が確認できる「プロファイル情報」が表示されるようにします。

 この技術が普及すれば、「まともな記事・広告」「まともなサイト」が一目瞭然となり、配信元の権利や利益の侵害は低減されるでしょう。

 昨年12月に設立された同組合には現在、新聞社やテレビ局、広告関連企業など31法人が加入。OP技術の開発と実装に向けたルール作りを進めており、2025年の本格稼働を目指しています。さらに将来的には、ブラウザーなどで採用される「ウェブ標準」を見据えています。

 偽情報の拡散などで問われているニュースの信頼性向上と、健全な広告市場の構築はデジタル時代の要請。同組合の村井純理事長(慶応大教授)は「OP技術は信頼性の高いメディアの可視化につながる」と強調しています。(メディア企画部)

OP技術研究組合の組合員(五十音順)
 朝日新聞社、一般社団法人WebDINO JAPAN、ADKマーケティング・ソリューションズ、高知新聞社、神戸新聞社、佐賀新聞社、産経新聞社、山陽新聞社、ジャパンタイムズ、スマートニュース、中国新聞社、中日新聞社、TBSテレビ、電通、日本経済新聞社、日本テレビ放送網、日本電信電話、日本放送協会、News Corp、博報堂DYメディアパートナーズ、ビデオリサーチ、福島民友新聞社、フジテレビジョン、fluct、北海道新聞社、北國新聞社、毎日新聞社、宮崎日日新聞社、Momentum、読売新聞東京本社、LINEヤフー

記事の「真正性」確認の基盤 OP技術研究組合事務局長に聞く
オンラインで答える黒坂達也さん

オンラインで答える黒坂達也さん

 インターネット環境の課題を「オリジネーター・プロファイル(OP)技術研究組合」の黒坂達也事務局長(48)=慶応大学大学院政策・メディア研究科特任准教授=に聞きました。

 ―ネット空間の記事流通の問題点は。

 「(外部配信している場合は)多くがヤフーのようなポータルサイト、スマートニュースのようなニュースアプリで閲覧されており、多ければ自社サイトの7、8倍。対価をもらっているとはいえ、広告収入を逸しています」

 「さらに厄介なのは交流サイト(SNS)経由。どぎついニュース、あるいはフェイクニュースを並べて媒体価値を上げ、金を稼いでいる。ニュースの体をした情報が氾濫しています」

 ―サービス基盤を提供するプラットフォーマーの対応は期待できませんか。

 「ヤフーもスマートニュースも(配信元が指摘する)課題は認識していますが、ページビューを稼いで広告でもうけるのが基本的ななりわい。自助努力、自浄作用で完全に解決するというのは正直難しい」

 ―生成AI(人工知能)の影響は。

 「要約に関しては便利ですが、自信たっぷりにうそをつく影響は大きい。高知新聞のフェイクニュースサイトも簡単に作れてしまう。現時点では(マイナス面の)臨界点を超えている感はあります」

 ―OP技術でうそを見抜けるようになる?

 「今は『おかしい』と思っても確かめる手段はほぼありませんが、暗号技術を使った識別子を付与しておけば、瞬時に記事や広告の『真正性』が確認できる。ただし、プラットフォーマーやSNS運営者の協力が前提なので、ヤフーなども組合に加入してくれています」

 ―良質なネット環境の実現は可能ですか。

 「OPは記事の良しあしを評価するのではなく、あくまで技術基盤。外形的なチェックで担保できる信頼性はあると考えており、この技術で読み手の判断を支援していきたい」

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