2024年 05月04日(土)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.11.07 18:00

桂浜水族館のカワウソ舎、老朽化でもう限界!「リアルな営み」紹介へリニューアルをーEINEE高知

SHARE

桂浜水族館のカワウソ舎。老朽化が進み、崩壊の危機を迎えています(写真はいずれも高知市浦戸の桂浜水族館)

桂浜水族館のカワウソ舎。老朽化が進み、崩壊の危機を迎えています(写真はいずれも高知市浦戸の桂浜水族館)

 高知市浦戸の人気スポット、桂浜水族館で今、先送りできない問題が起きています。それは、カワウソ舎崩壊の危機。コツメカワウソの展示スペースが老朽化し、限界を迎えました。さらに、コツメカワウソは近年、その愛らしさからペットにする人が増え、生息地では乱獲や密輸の危機にさらされています。桂浜水族館では二つの危機を乗り越えようと、クラウドファンディングを開始。「リアルな営みを紹介するカワウソ舎」へのリニューアルを目指しています。 
 
■柱はシロアリ、水槽は水漏れ、ドアも落ち… 

コツメカワウソの王子と桜の一家。この夏に生まれた赤ちゃんたちがすくすく成長中

コツメカワウソの王子と桜の一家。この夏に生まれた赤ちゃんたちがすくすく成長中

 桂浜水族館では2005年から、コツメカワウソの飼育を本格的に始めました。現在は雄の王子と雌の桜(おう)の一家がカワウソ舎で暮らし、今年8月には赤ちゃんが生まれました。 
 
  カワウソ舎は20年以上前に立てられ、横幅は6メートルほど、奥行きは4メートル弱。離れて見るとあまり分かりませんが、「もう、ぼろぼろ」と飼育員の丸野貴也さんは嘆きます。 
 
 海のすぐそばにある桂浜水族館は潮風の影響をもろに受けます。経年劣化に加えて、カワウソの習性もカワウソ舎崩壊の一因に。 
 
カワウソ舎はよく見ると、ぼろぼろ。塗装が自然に剥がれた箇所を、カワウソたちがさらに剥がしていきます

カワウソ舎はよく見ると、ぼろぼろ。塗装が自然に剥がれた箇所を、カワウソたちがさらに剥がしていきます

 「カワウソは手先が器用。岩場に手を突っ込んで魚を捕る生き物なので、木や壁が剥がれたらさらに剥がします。子どもたちはみんなやんちゃ。成長につれて力も強くなり、破壊もします」 
 
 これまでにも資金を募って修繕してきましたが、現在は柱がシロアリ被害で朽ち、水槽はコーティングが劣化して水漏れが発生。「この間、ドアが外れて落ちました。『だましだまし』とよく言いますが、もうだませてない」と丸野さん。建て替えに向けて動き始めました。 
 
■「かわいいから飼いたい」でいいの?安易なペット化に警鐘 

 カワウソ舎のリニューアルに向け、桂浜水族館が考えたのが、近年のカワウソブームへの警鐘です。 
 
カワウソたちを見守る飼育員の丸野貴也さん。「カワウソたちが遊ぶ姿だけでなく、抱える問題も伝えられる展示にしていきたい」(提供写真)

カワウソたちを見守る飼育員の丸野貴也さん。「カワウソたちが遊ぶ姿だけでなく、抱える問題も伝えられる展示にしていきたい」(提供写真)

 コツメカワウソは最も小型のカワウソで、主に東南アジアに生息しています。日本で「かわいい」とペットにする人が増えた結果、現地では乱獲や密輸が横行。環境破壊も進み、絶滅が危ぶまれています。 
 
 コツメカワウソはそもそも、ペットには向かない生き物。今回のクラウドファンディングを担当する長谷川皓さんは「ふんを大量にするし、獣の臭いもあります。飼育員が戻ると、『カワウソ舎から帰ってきたな』と分かるくらい」。広報の森香央理さんは「SNSで拡散される写真や動画を見ていると、カワウソのリアルが知られていないと感じますね」。 
 
 「『飼いたい』という人に悪気はないけれど、結果としてカワウソの命が奪われている」「ニホンカワウソが最後に確認された高知の水族館として、現状を伝える役目があるのでは」 
 
 そんな議論を経て、SNSやユーチューブで「カワウソのリアル」を発信。ペットブームに警鐘を慣らしています。 
 
■臭い、泣き声 カワウソのリアルな営みを伝えたい 

カワウソ舎の内部。シロアリに食われ、「土台はぼろぼろ」

カワウソ舎の内部。シロアリに食われ、「土台はぼろぼろ」

 桂浜水族館は和建設、仁淀川町と連携し、町内で森林保全活動を進めています。カワウソ舎の建て替えでは間伐材を活用していきます。 
 
 目標は、カワウソたちに今よりもいい暮らしを提供すること。「飼育数を考えると、もっと広いスペースが欲しいですが、難しい」と丸野さん。「カワウソたちが遊べるギミック(仕掛け)を入れて、狭い空間でも伸び伸び暮らせるようにしたい」と、石畳をよじ登れるスペースを造る、流れのある川を設置するなどの構想を練っています。 
 
 来館者向けには、絶滅が危ぶまれている実態も伝える展示を模索しています。 
 
 「今の新しい水族館はほとんどがガラス張りで、カワウソは完全室内展示が多くなりました。うちみたいなむき出し展示は珍しい」と森さん。桂浜水族館ならではの古さを生かし、「臭いや鳴き声、餌を食べる際の音なども含めて、リアルな営みを知ってもらう場にしたい」と考えています。 
 
「いとおしいから会いに行こう」と思ってもらえるカワウソ舎を目指します(提供写真)

「いとおしいから会いに行こう」と思ってもらえるカワウソ舎を目指します(提供写真)

 「カワウソに対する『かわいいから飼いたい』という思いを、『いとおしいから会いに行こう』に変えたい」と丸野さんたちは口をそろえます。カワウソの飼育環境をよくすることで、安易なペット化にも一石を投じていく。桂浜水族館の新たな挑戦です。(門田朋三)

 
 
 クラウドファンディングは12月26日まで行われ、目標は800万円。寄せられた資金はカワウソ舎の解体や設計、建設費に役立てられます。詳しくはこちらから。

高知のニュース 高知市 WEB限定 高知新聞からのお知らせ

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月