2023.11.07 18:00
桂浜水族館のカワウソ舎、老朽化でもう限界!「リアルな営み」紹介へリニューアルをーEINEE高知

桂浜水族館のカワウソ舎。老朽化が進み、崩壊の危機を迎えています(写真はいずれも高知市浦戸の桂浜水族館)
■柱はシロアリ、水槽は水漏れ、ドアも落ち…

コツメカワウソの王子と桜の一家。この夏に生まれた赤ちゃんたちがすくすく成長中
カワウソ舎は20年以上前に立てられ、横幅は6メートルほど、奥行きは4メートル弱。離れて見るとあまり分かりませんが、「もう、ぼろぼろ」と飼育員の丸野貴也さんは嘆きます。
海のすぐそばにある桂浜水族館は潮風の影響をもろに受けます。経年劣化に加えて、カワウソの習性もカワウソ舎崩壊の一因に。

カワウソ舎はよく見ると、ぼろぼろ。塗装が自然に剥がれた箇所を、カワウソたちがさらに剥がしていきます
これまでにも資金を募って修繕してきましたが、現在は柱がシロアリ被害で朽ち、水槽はコーティングが劣化して水漏れが発生。「この間、ドアが外れて落ちました。『だましだまし』とよく言いますが、もうだませてない」と丸野さん。建て替えに向けて動き始めました。
■「かわいいから飼いたい」でいいの?安易なペット化に警鐘
カワウソ舎のリニューアルに向け、桂浜水族館が考えたのが、近年のカワウソブームへの警鐘です。

カワウソたちを見守る飼育員の丸野貴也さん。「カワウソたちが遊ぶ姿だけでなく、抱える問題も伝えられる展示にしていきたい」(提供写真)
コツメカワウソはそもそも、ペットには向かない生き物。今回のクラウドファンディングを担当する長谷川皓さんは「ふんを大量にするし、獣の臭いもあります。飼育員が戻ると、『カワウソ舎から帰ってきたな』と分かるくらい」。広報の森香央理さんは「SNSで拡散される写真や動画を見ていると、カワウソのリアルが知られていないと感じますね」。
「『飼いたい』という人に悪気はないけれど、結果としてカワウソの命が奪われている」「ニホンカワウソが最後に確認された高知の水族館として、現状を伝える役目があるのでは」
そんな議論を経て、SNSやユーチューブで「カワウソのリアル」を発信。ペットブームに警鐘を慣らしています。
■臭い、泣き声 カワウソのリアルな営みを伝えたい

カワウソ舎の内部。シロアリに食われ、「土台はぼろぼろ」
目標は、カワウソたちに今よりもいい暮らしを提供すること。「飼育数を考えると、もっと広いスペースが欲しいですが、難しい」と丸野さん。「カワウソたちが遊べるギミック(仕掛け)を入れて、狭い空間でも伸び伸び暮らせるようにしたい」と、石畳をよじ登れるスペースを造る、流れのある川を設置するなどの構想を練っています。
来館者向けには、絶滅が危ぶまれている実態も伝える展示を模索しています。
「今の新しい水族館はほとんどがガラス張りで、カワウソは完全室内展示が多くなりました。うちみたいなむき出し展示は珍しい」と森さん。桂浜水族館ならではの古さを生かし、「臭いや鳴き声、餌を食べる際の音なども含めて、リアルな営みを知ってもらう場にしたい」と考えています。

「いとおしいから会いに行こう」と思ってもらえるカワウソ舎を目指します(提供写真)

クラウドファンディングは12月26日まで行われ、目標は800万円。寄せられた資金はカワウソ舎の解体や設計、建設費に役立てられます。詳しくはこちらから。