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2023.11.05 08:00

小社会 大ちゃん逝く

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 仕切りの時、体の前で両こぶしを合わせ、ぐーと顔の前まで持ち上げて気合を見せる。軍配が返ると、鋭い立ち合いから相手を電車道で土俵外へ。往年の胸のすくような取組の記憶がよみがえる。元大関朝潮、長岡末弘さんの逝去が報じられた。

 角界でこれほど愛された力士はいないだろう。愛嬌(あいきょう)のある風貌と陽気な性格。実力はあるが勝負弱く、そのもどかしさがまた人を引きつけた。「不思議な力士」「長い眠りをむさぼっていた」とは1985年に初の賜杯を手にした時の本紙記事。なかなかの書かれ方だが、愛情の裏返しだ。

 結局、綱取りはかなわず、優勝も1回限りだったが、強すぎても逆に「大ちゃん」らしくなかったのかも。晩年は弟子の管理で批判も受けたが、相撲とファンの距離を縮めた功績は語り継がれる。

 相撲界には「江戸の大関より土地の三段目」との言葉がある。番付が低くても地元出身力士を応援する文化を意味し、長岡さんは自伝でこの言葉を使って郷土愛を語っている(「大相撲ここだけの話」)。

 また、自らを「根性なし」と認めつつ「楽天的で明るい性格」で稽古を乗り切れたとし、その性格は「土佐の血」が影響している、とも。古里の存在は大きかったに違いない。

 朝潮の後、幕内の郷土力士の系譜は土佐ノ海や豊ノ島、栃煌山らがつないできたが、途切れて3年余りがたつ。「相撲王国・土佐」のファンには冬の時代が続く。

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