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2023.11.03 08:00

【新たな経済対策】首相は説明を尽くせ

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 物価高から暮らしを守るのは当然だが、見栄えを優先した対策で効果が薄ければ将来の負担を大きくする。慎重な検討が求められる。
 政府が決定した経済対策の規模は、3兆円台半ばを見込む所得税と住民税の減税を含めて17兆円規模となった。2023年度の一般会計補正予算案に13兆円余りを計上し、臨時国会での成立を目指す。
 対策は大きく5項目で構成する。物価高対策や賃上げのほか、半導体など国内投資促進や人口減少対策、防災・減災などに取り組む。
 柱となる減税は、岸田文雄首相が税収増の一部を還元し、物価高による国民の負担を軽減すると意欲を示していた。24年6月から実施し、扶養家族を含めて1人当たり所得税など計4万円を予定する。
 所得税と住民税が非課税の低所得世帯には1世帯7万円を給付する。納税額が少ない世帯にも対応して、施策が満遍なく行き渡るよう配慮はされているように見える。
 だが、そもそも物価上昇で生活が苦しい中で、減税は来年の実施で効果が期待できるのかと疑問が向けられている。低迷する政権を浮揚させたいとの思惑が取り沙汰され、選挙対策との見方や、ばらまきとの批判が上がった。
 減税を巡る首相の姿勢が定まらなかったことも行き当たりばったりの印象を与え、首相への批判となっていることは真剣に受け止める必要がある。これでは政策への信頼は高まりはしない。
 各野党は衆参両院の予算委員会で、所得税減税の給付金への変更や社会保険料の減免、消費税減税など独自の主張を展開しながら見直しを迫った。これに対して首相は政府の対策の有効性を訴え、1回で終われるように経済を盛り上げていきたいと態度を変えなかった。
 また、減税と防衛費増額に伴う増税方針との整合性も問われた。政府は財源の一部を増税で賄う方針だが実施時期は決まっていない。少子化対策に追加投入する財源の確保策も先送りしている。首相は、まず経済を立て直すと強調したが、負担が増大すると感じれば消費は萎縮して景気を後退させる。
 年末に期限を迎えるガソリンなどの燃油と電気・ガス代を抑える補助金は延長する。国際情勢や円安が価格を押し上げる。景気への悪影響を避ける対策が必要だが、緊急的な対応が長期化することの弊害も考えられる。検証が必要だ。
 首相は所信表明演説で財政健全化には言及しなかった。政府は新型コロナウイルス禍から経済が回復しているため歳出構造は平時に戻す方針だが、経済対策の規模は膨らんだ。国債の増発は避けられない見通しで、財政は一段と悪化する。
 世論調査では、所得税減税は支持されているものの経済対策への期待感はさほど高くはない。また財政への危惧も強い。目先の対策とともに、長期的な視点からの施策が求められている。十分な説明と、それに基づく国会での審議が求められる。

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