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2023.11.02 05:00

【金融緩和再修正】正常化への道筋を明確に

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 長期金利の上限を抑え込む効果と副作用とのバランスをとる難しさに直面したようだ。異例の金融政策から抜け出すのは簡単ではない。景気を冷やさない目配りと市場の動向への警戒が欠かせない。
 日銀は大規模な金融緩和策の再修正を決めた。長期金利が1%を超える場合、日銀が無制限に国債を買い入れる「指し値オペ」で金利を抑えることにしていたが、再修正では上限を「1%をめど」として1%を一定程度超えることも容認する。
 7月に長期金利を引き上げたのは念のための措置と位置付けたが、早くも見直しを迫られた。米金利上昇につられて、長期金利が想定を上回る速さで上昇し、1%に近づいてきたためだ。
 緩和効果を期待して無理に1%以下に抑え込むと、金利が本来あるべき水準とかけ離れて債券市場をゆがめてしまう。植田和男総裁は「副作用が発生する少し前に動きたいと判断した」と説明した。
 過度な政策修正を警戒していた市場は微修正と受け止めたようだ。外国為替市場では日米金利差を意識した円安ドル高が進んだ。東京株式市場は、円安で輸出企業の収益が改善するとの期待から大幅続伸した。長期金利の指標となる国債の利回りは高水準をつけた。
 長期金利の一段の上昇は景気後退への危惧を強める。企業の借り入れや住宅ローンの金利上昇につながり、設備投資や消費の減少を招きかねない。経済対策の効果にも影響することになる。
 日銀は、賃金の上昇を伴う形で物価上昇率を2%に安定させる目標を掲げる。今回もマイナス金利政策など大規模緩和の大枠は維持した。ただ、賃金と物価上昇の好循環は見通せる状況ではない。
 消費者物価は、原材料費や輸送費などコスト増加分を価格に転嫁する動きを受けて上昇が続く。伸び率はやや鈍化してきたが、暮らしを圧迫していることに変わりはない。
 日銀は2023年度の消費者物価上昇率の見通しを引き上げた。2%割れに戻るとみていた24年度も2・8%と上方修正した。25年度は2%を下回るが、7月見通しをやや上回る水準とみている。
 物価上昇の要因には原材料費などの値上がりが指摘される。日米の金利差により円安に振れやすいことが輸入物価を押し上げ、物価高に拍車をかける。賃金上昇の動きは広まってきたが、景気動向に影響されるだけに先行きは不透明だ。
 大規模緩和で日銀が市場から購入した国債の額も膨らんでいる。市場に出回る国債の半分を持ち、購入累計額は1千兆円に達する。景気を下支えした副作用もまたのしかかる。
 政府は税収で賄えない歳入を国債の大量発行で穴埋めしてきた。金利の上昇は国債の利払いが膨らむ。財政を圧迫し健全化を遠ざける。
 異例の緩和策からの出口戦略は定まらない。厳しい局面だけに、その道筋の検討を十分に重ね、丁寧に運営することが不可欠だ。

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