2023.10.27 08:00
小社会 読書週間
文芸評論家、川本三郎さんの本紙随想に教わった。散歩の習慣は明治になって西洋から伝わる。まずは知識人や、高等教育を受けながら世俗的な苦労を嫌い、職につかない「高等遊民」が楽しむようになった。
大正期には、永井荷風が東京市中の散歩エッセー「日和下駄」を出版。「思索の行為として文化になった」。無用から思索へ。小欄も朝の散歩が日課。今なら日々遅くなる朝焼けに季節を感じ、ラジオで情報番組を聴く。無用のことではないと信じて歩く。
読書はどうだろう。アニメーション監督の宮崎駿さんにこんな言葉がある。「本には効き目なんかないんです。振り返ってみたら効き目があったということにすぎない」。すぐに実利や成績の向上に結び付かなくても無駄ではない。いつか血肉になる日がくるということだろう。
先日、文部科学省の調査が本紙に出ていた。21歳の若者の6割強は1カ月に読んだ本が「0冊」。交流サイト(SNS)や動画投稿サイトの普及が一因だとか。何かと忙しい時代だが、代わりに血肉になるものを得ていればいいけれど。
朝晩の街で日の短さを感じ、「灯火親しむべし」の季節になった。きょうから読書週間。